いつか最後のその刻‐トキ‐まで


前回あげた、薬獅子のリババージョンです。
そいで、突然始まります。ここから始まってもいいし、この前段階は前回の薬獅子で怪我をするのが薬研で、それを慌てて自分の家に連れて帰って治療したって言うのがある。


まぁ、唐突に始まってるって事だけ覚えておけばOK!!





























「本当に、悪かった」

ベッドに座った薬研の前で正座をして謝る獅子王。
薬研と言えば、困ったような顔をして気にするなと言ってる。その表情をなくしたら女王様みたいなのにね。
が、獅子王にしたら、そうもいかない。

「だって、お前女の子なのに、傷物にして俺っ」
「傷物ってアンタ」

その言葉に、笑い出した薬研。獅子王にしたら、何故彼女が笑っているのかわからない。

「傷物って、そう言う意味じゃないだろ。俺っちは気にしてないってのに・・・」
「でも、責任取らないと、だろ?」

じいちゃんっ子だった獅子王は、よく女の子に傷をつけたらいけない、付けたら責任を取りなさいと言われて育って来た。その為の発言だった。

「ククッ、じゃあ、責任とって俺っちの仮の彼氏になってもらおうか」
「仮?」
「最近、言い寄られて困ってたんだ。アンタなら、同じ学校じゃないし丁度良いよ」

薬研は、見た目はとても美人だ。その上、さばさばした性格。男女ともに人気があるだろう。それ故に、言い寄られる機会も多い。足蹴にしてください、女王様といわんばかりだね。
それが、薬研にとってはわずらわしい。特に、男はしつこい。でも、自分の不注意で怪我を薬研にさせて、こうして2人きりだと言うのに、手を出すそぶりも見せず紳士に謝ってくる獅子王なら信用できるような気がした。

「解かった!俺、こう見えても強いしボディーガードにでも、何でもなってやるよ!」

ボディーガード、間違っちゃいない気もするが。と、薬研は半笑いだ。

「じゃ、手始めに俺っちの家まで送ってくれや」

そこで、最大の難関が待ち受けてることなど、獅子王はまだ知らない。
















「薬研が、あの粟田口の妹なんて知らなかった」

学校からの帰り道、獅子王が恨みがましそうに薬研に言った。
薬研は、笑うばかり。
あの後、薬研を家まで送った獅子王は、粟田口家の玄関先でお覚悟目されそうになった。と言えばだいたいお分かりだろう。

「まぁ、最終的に一兄にも認められて良かったじゃないか」
「そう、だけど」

まだ、ブスッとした顔の獅子王の頭を少し背伸びして薬研がなでる。
フラフラとした薬研にハッとして獅子王は、その体を抱きとめた。

「おう、サンキューな」

笑う薬研に、獅子王はただ照れくさそうに、おぅ、と答えただけだった。奥手か。

「あっ、そうだ。アンタ、甘いものは平気か?」
「あぁ、割りと好きだけど?」

そう言えば、薬研は笑ってコレやる、と可愛らしい包みを渡してきた。
その中身を覗けば、クッキーが数個つめてあった。

「コレ!」
「今日、調理実習だったんだ。で、それ作ったから」

不味くても、文句言うなよ、と言う薬研の頬はほんのりと赤く染まっていて、獅子王は自分のためかと思うと、嬉しくなった。
何でこいつら付き合ってないんだ?仮なんだ?

「ありがと、大切に食う!」

それは丁度、薬研の家の前で。獅子王は、じゃあまた明日!と、大きく手を振って走って帰って行った。
ちなみに、獅子王の家はココから少しした所でわりと近い。















「はっ?助っ人?」
「そう、頼むよ獅子王!」

と、獅子王に頭を下げているのは同じクラスのサッカー部の部員。
練習試合があるが、ギリギリの人数だった部員が一人病欠で足りなくなってしまったらしい。

「でも、俺用事有るし・・・」
「頼む!今日だけで良いんだ!」

この通り、と頭を下げる彼を無碍にも出来ず、獅子王は携帯を取り出した。


獅子王:今日、向かえ遅くなっても平気か?

薬研にメッセージを送れば、直ぐに既読が付いた。

薬研:大丈夫だけど、何かあったのか?
獅子王:サッカー部の助っ人頼まれた

しょんぼりとしたスタンプを一緒に送れば、わかったと返事が来た。

薬研:じゃあ、俺っちがそっちまで行ってもいいか?
獅子王:構わないけど、ココの場所解かる?

薬研の通っている中学からは遠くないが、近いわけでもない。だから、兄弟の居る高校とはいえ迷子にでもなったら大変だと思った。

薬研:大丈夫だ。何度か行ったことあるからな。
獅子王:なら、サッカー場まで来てくれよな?
薬研:おう、アンタのカッコいい姿ってのを見せてもらおうじゃねぇの

そのコメントを見た途端、ニヒルに笑った彼女のあの意地の悪いような笑顔が思い出されて携帯を持ったまま、獅子王は机に蹲った。

「おーい、獅子王?」
「あっ、あぁ悪い。助っ人、大丈夫だ」
「マジで?ありがとう!!!」

じゃ、放課後にな!と言って、ぶんぶん手を振って彼は獅子王の前から消えた。

















薬研は、放課後学校を出るといつもと違う路を行く。
すいすいと進み、迷うことなく兄や獅子王が通う高校に着いた。

「えっと、サッカー場ってどこだ?」

下校のために空いていた校門のど真ん中で、薬研は首を傾げた。

「・・・薬研ちゃん?」

丁度、隣を通り過ぎようとした彼女から聞き知った声が聞こえてきて振り向く。

「あっ、光忠のねーさん。久しぶりだな」

薬研と、この光忠は顔見知りだ。小学校が一緒で、少し波長が合ったというか、それ以来少ないが、連絡を取り合っている。
料理の話なんかは、特に。

「ねーさんも、そう言えばこの学校だったな」
「うん、そうだね。粟田口くんなら、まだ生徒会室だよ?」

一期は、2年で今期生徒会副会長だ。少し残ってやることがあるのだろう。が、今日は一期に会いに来たのではない。

「いや、一兄じゃねぇんだ。サッカー場に用が有ってな」
「サッカー場?あぁ、今日は確か練習試合があるとか言ってたね。つれてってあげようか?」

その申し出を受け入れて、薬研は光忠の後ろに続いた。薬研も光忠も、タイプの異なる美人だった。当然、視線が集まってくるわけで。
うっとうしく思う。

それなりに、施設の奥に有ったサッカー場は人・・・主に女生徒であふれていた。
キャーキャーと黄色い悲鳴の中、薬研は少し高台になっている場所から、あの綺麗な金髪をさがした。

「それで、薬研ちゃんは誰を探してるのかな?」
「あぁ、光忠のねーちゃんは知ってるか?獅子王ってんだが・・・」
「獅子王君?」
「今日、サッカー部の助っ人に出てるらしい」

そう、言葉を交わしながらも獅子王を探した。
あっ、と薬研は声を上げる。
視線の先には、少しうねった髪型の綺麗な金髪。
獅子王は、見つけたときには相手のゴールに一直線に進んで行っていた。
相手をかわして、味方にパスを送る。
それが、得点のチャンスにつながり、ホイッスルが鳴った。
特別に、凄い役割をしているわけじゃない。けれど、目が離せなかった。
フェンスの出入り口で、きゃあきゃあと集まっている女生徒たちの少し離れた後ろで薬研は獅子王を待っていた。
薬研には、予感があった。
彼らが、出てきた時にキャーと言う黄色い悲鳴は一段と大きくなった。その中で一言大きく彼の名前を呼んだ。

「獅子王!」

その一言で、獅子王は誰かを探すようにさ迷わせていた視線をフッと薬研に止めた。

「ちょっと、どいてくれる?」

そう言って、女子に囲まれた中から抜け出してきた獅子王は、そのまま薬研に抱きついた。

「あー、疲れたー!」
「御疲れさん。汗、すっごいな」
「あ、悪い!すぐ、シャワー浴びてくっから、待ってろよ!」

そう言うと、バッと体を離した獅子王はバタバタと更衣室にかけていく。

「ちゃんと乾かしてから出て来いよなー」

風邪引くぜ?と薬研は笑った。

「・・・獅子王くんと付き合ってたの?」
「ん?あぁ、まぁね」

少し歯切れの悪い物言いに、光忠は引っかかるものを覚えるも、ただの照れ隠しかとも思ってそれ以上の言及はしなかった。











この後、仮関係に苦悩する獅子王と薬研が居るんだぜ?(私の頭の中に)

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