明日、笑えるように


粟田口 薬研→アワタグチ ヤゲン(13)中一。部活動には入っていないが、時々助っ人として色々な部活に登場するある意味有名人(学校の)。朝刊の配達のバイトを続けている。
源 獅子王→ミナモト シシオ(18)高三。

獅子王と薬研のラブストーリーを妄想してみた。ってか、マイナーすぎるな。



「じゃあな!」

と、薬研は帰り道友達といつもの場所で別れると、公園に入った。
薬研の家は、友達と帰るこの道の一本向こう側。公園を突っ切れば、直ぐそこだった。
いつもなら、誰もいない、居ても老人の散歩の一休み程度だが、この日は違った。
ギィ、ギィ、と小さく音を鳴らすブランコ。
ふと、目をやれば、兄の一期が通う高校の制服を着た、金髪の女の子が一人。
俯いたまま、ブランコを揺らしていた。
いつもなら、通り過ぎるような光景。その日も、例に漏れず通り過ぎようとした。
けど、家に帰ろうと思って足を一歩踏み出したら、頭に過ぎる彼女の姿。
薬研は、あー、くそっ!と頭を掻き毟って座っていた彼女へ近づいた。

「おねーさん、ココで何してるんだ?」
「うわっ!!」

ひょいっ、と覗き込むように腰を曲げたら、彼女は驚いて体を起した。

「びっくりした」
「驚かせて悪かったな。アンタ、ココで何してるんだ?」

そう、薬研がもう一度問いかけると、彼女は別に・・・、と呟いた。
そんな、彼女の様子に薬研は、アンタなぁ、と苦笑いした。

「別にって顔してねぇな。ほら、言ってみろって」
「・・・何で会ったばっかのお前に言わなきゃなんねっつの」
「こんな所で一人で居るんだから、アンタの友達にも話せないんじゃねぇのか?だったら、見ず知らずの親切な俺に話してみろって言ってんの」

パシッ、と両手で彼女の顔を掴むと、真っ直ぐに薬研は彼女を見つめた。
それに、少し顔を赤くさせた彼女は薬研の手を振り払うと、ブランコの上に慌てて立った。

「わっ、バカっ!」

勢いよくぐら付いたブランコで、バランスを取れなくなった彼女の腕を薬研が引っ張った。
いてて、としりもちを付いた薬研は、自分はそこそこに彼女を見やる。
たいして怪我はしてなさそうで良かったと、息を吐いた。

「危ないな、アンタ。怪我は?」

薬研は自分の上から彼女を起すと、そう問いかけた。
彼女は吃驚したのか、恥ずかしがっているのか、首を横に振った事で合図し、顔を上げなかった。

「立てるか?」

薬研が立ち上がって、土ぼこりを払うと、彼女にそう言いながら手を差し出した。
が、彼女はまたも首を横に振った。怪訝そうに、薬研は彼女を観察すると、膝から僅かに出血が見られた。

「切ったのか?」
「・・・ぃ」
「あ゛っ?」

小さな声で聞こえず、薬研が聞き返せば痛い!と彼女は泣き出した。
おいおい、と薬研は呟いた。誰も、何があったか話せとは言ったが、泣けとは言ってない。
仕方ないな、と息を吐いた薬研は、目を擦る彼女の手を首に回させ、抱き上げた。
泣いていた彼女は、気付いているのか気付いていないのか、泣き続けている。
全く、と薬研はそのまま彼女の荷物を抱えると、歩き出す。
彼女がヒックとしゃくりを上げる度に、薬研はなだめるようにその背を優しくあやしながら家路に着いた。

「ただいまー」

と、鍵を開けて玄関に入る。中に誰も居ないことは解かっているけど、コレだけは癖になってしまっている。
とりあえず、いつの間にか泣き止んでいた彼女を玄関に下ろし、ローファーを脱がせるとまた抱えた。

「ちょ、俺歩ける!」
「いいから、大人しくしときな。アンタ、まだ足痛いだろ」

と抱えたまま薬研はリビングのソファーに彼女を下ろした。
ちょっと待ってろ、といい薬研は少しして救急箱を手に戻ってきた。
傷口がある方へ跪いてテキパキと傷口を洗い流して、消毒し、大きめの絆創膏を傷口に貼り付けた。

「あと、どっか痛いところは無いか?」
「ねーよ、ありがとな!」

泣いて、すっきりしたのか、目元を赤く染めながら彼女は笑った。
照れくさそうに、薬研は少し俯いて、どういたしましてと呟いた。

「アンタ、いい顔になったな」

と、薬研が彼女の顔を見て笑った瞬間、玄関の開く音がした。
薬研は、しまった、と額に手を当てた。本当ならば、家に連れてくる予定は無かったし、家族に見つかる予定も無かった。
が、慌てたところでどうしようもなく、薬研は諦めて玄関から繋がるリビングのドアが開くのを静かに待った。

「ただいま、薬研。って、源先輩?」
「おかえり、一兄。知り合いか?」

薬研ににっこりと、微笑みかけた一期は、その目の前にいた彼女に驚いたような顔をした。
彼女もまた、一期を見て驚いたような顔をした。

「粟田口?って、ことはコイツお前の弟かよ!?」
「はい。4つ下の弟で薬研と申します。薬研、源先輩がどうして家に?」

首を傾げた一期に、薬研は簡単に経緯を説明する。まぁ、たぶん知られたくないと思って公園で会ったとかは言わないで。

「て、事でこのねーちゃん送ってくっから」

と、早々に彼女の腕をとって、玄関に向かった。
後ろで、また次はゆっくりいらしてくださいね、と追いかけてきた一期が言う。
行ってきます、と言って慌てて外に出た。

「あっぶねぇ、あのまま居たら、他のまで帰ってきちまう」

ほら、と手を差し出して彼女を促す薬研。
家まで送る、と言う薬研に彼女は首をブンブンと横に振った。

「いっ、いい!めっちゃ、迷惑かけたし!大丈夫!」
「いいから、素直に送られとけって。アンタ、怪我してるぶんいつもと違うんだから」

と、言って薬研は少し強引に彼女の手を引いた。
うわっと、転びかけた体を薬研は支える。抱えて帰ってきてるときも思ったが、彼女は軽すぎる。ちゃんと食べてるのか心配になった。

「アンタの家、どっち?」
「・・・あっち」

うぅー、と唸りながら彼女が指し示した方向に、笑ってじゃあ行くかと歩き出す。
怪我をしている彼女を慮って、ゆっくりと。

「そう言えば、えぇっと・・・源さん?」
「・・・シシオって呼べよ。えっと、薬研?って、俺も呼ぶから」

手を繋いだまま、ぷいっと首を反らした彼女、シシオが言った。

「名前、源シシオって言うのか。そう言えば、紹介がまだだったな。俺は、粟田口薬研。この刀剣町第二中学の1年だ。アンタ、ええっとシシオってどんな字書くんだ?」
「・・・獅子の王」

ぼそり、と呟かれたそれ。獅子の王で、獅子王。珍しい名前だと思った。が、薬研は彼女を見てぴったりだとも思った。

「へぇ、強そうないい名前だな」
「おぅ、ありがと。父さんが、付けてくれた」

照れたように笑う獅子王。その顔を見て、薬研も満足げに笑う。

「そう言えば、お前粟田口と似てないな?」
「あぁ、そりゃ一兄はまるっきり親父の生き写しみたいなもんだし、俺は俺で母親似だ。似てないのも無理はねぇさ」
「・・・あのロイヤルな顔が、もう一つ世の中には存在してるのか」

いきなり真面目な顔でそう言った獅子王に、薬研は噴出した。

「ロっ、ロイヤルっ!ククッ、アハハッ!」
「み、見慣れてるお前はともかく、学校じゃアイツ王子様とか影で呼ばれてるんだぜ!?ロイヤルだろうが!」
「王子様!!いっ、一兄、アハハハハッ!!!」

ひーひー、と笑いすぎて言う薬研。その姿が、年相応に見えて、獅子王は少しなんと言うかホッとした。
今までの対応が、少しどころか中一の少年がやるものじゃない。と思ったからだ。

「あっ、俺の家ここ」

と、獅子王の家の前に付く。意外と近かったな、と薬研は言った。
まぁ、近くなければあの公園で落ち込んでいたりしないだろうが。

「そっか。じゃあ、今度はそう溜める前に誰かに相談しとけよ、獅子王さん?」

じゃあな、と片手を挙げて背を向けた薬研。その裾を、慌てて獅子王は握った。

「えっ?」

中途半端に振り向いた薬研の瞳に飛び込んできた獅子王の顔は、真っ赤に染まっていた。

「やっ、薬研、えっと、その、あの、な・・・?」

うぅー、と唸りだした獅子王。後ろを掴まれている所為で、振り向いて獅子王をなだめることも出来ない薬研は、獅子王が落ち着くまで待っていた。

「うぅー・・・、獅子王でいい」
「んっ?」
「獅子王で良いって言った!さんとかいらねぇから!それから、連絡先教えてくれ!!」

再び、振り向いた薬研に写る獅子王は、恥ずかしげに上目遣いで、こちらを見やる。
クスッと笑うと、じゃあ、その手を離してくんねぇかな?と薬研は言った。

「このままじゃ、連絡先教えることも出来ないから」

と、ポケットから取り出した携帯を振って見せた。離された手。振り返り、携帯で連絡先を交換した。
こちらの連絡先が、届いたところで、獅子王の顔がぱぁっと輝いた。

ドクンッ・・・

薬研は、酷く心臓が高鳴るのを感じる。あぁ、やばいと。

「ありがとう!えっと、あのさ、迷惑かけないから、連絡してもいいか?」
「ダメだったら、教えてねぇよ。好きな時に、メールでも電話でもラインでも入れておいて構わねぇ」

ニッコリ笑って、少し照れ隠しのように薬研は獅子王の金糸を撫でるとじゃあな、と手を振って獅子王の家を後にした。


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