ひとめみてほれた、はれた


概要→桐横のファーストコンタクトを捏造してみた。





そう言えば、俺が初めて桐嶋さんに会ったのは何時の事だっただろうか?
あれ?そう言えば、いつから苦手だっただろうか?

そう考え、ふと、桐嶋さんと付き合いだしてから、桐嶋さんとの出会いが懐かしくなり、思い出そうとした。

あぁ、と数年前の記憶を俺は引きずり出して来た…


そう、桐嶋さんに初めて会ったのは入社式の直ぐ後。
営業に配属された俺は、先輩方に連れ回され各編集室を回っていたように思う。
そして、今とは違うエメラルドの編集長、サファイアの編集長達と一緒に、当時からの人気雑誌ジャプンの、一際若い編集長として紹介されたのが、桐嶋さんだった。

あれ?と、そこで俺はあることに気がつく。

それは、ただただ、入社当初の何気ない記憶。
だと言うのに、当時の編集長達の顔や上司、先輩の顔を朧気にしか覚えてないくせに、桐嶋さんの顔だけハッキリと覚えていたから。

しかし、今の俺にはそれを紐解く手立てはなく、次に会ったときの事を思い出してみる。


次に会ったのは…

そうして、思い出したのはその後直ぐの出来事。
その当時、俺にはその人が誰か解らなかったけど、今思えば、桐嶋さんだった気がする。

あの時の桐嶋さんは雨の中、一人空を見上げてただ突っ立ってた。

だから、俺は…

『傘もささずに何やってんだ、こんな雨ん中!!アンタバカか!?』

って、言って傘の中に無理やり入れた気がする。
そうしたら、その人は生気の無い眼で俺を見たんだ。

『ぁ゛?誰だお前…俺に構うな』

生気はないのにまるで、手負いの獣みたいな鋭い目。
それに一瞬、ビクッて肩を震わせたけど、そんな目をした友人が一人居たため、怯むことなんて無かった。

『んな事言って、風邪でも引いたらどうする!』

『ほっとけ!!お前に関係ねぇだろうが!!』

『ほっとけるかバカ野郎!』

お節介だって、解ってた。
高野の事だって、俺がしたくて、アイツに踏み込んだ。俺が、どうにかしてやらなきゃって思ったから。

って、違う。今は桐嶋さんの事だ。

『アンタが今体調崩して、困る奴がいるんだろうがよ!!ちょっとは、その人の事考えてみたらどうだ!?』

偶然目に入った指輪に託つけて、捲し立てる。

その指輪に少し、心が痛んだ事を今、鮮明に思い出す。なぜ、だったか何て今更知りようもない。

捲し立てたら、その人は目が覚めたように驚いたんだ。
だから、それに気がついた俺は、気恥ずかしくなって、透明の何処にでも売ってるようなビニール傘を押し付けて走って帰ったんだ。

それでも、後ろから
『ありがとう』
の声がして、嬉しかったんだ、俺は。

その後、直ぐに桐嶋さんは忌引きをした。少し長い休暇をとっていると思ってたけど、本当は奥さんがあの雨の日亡くなっていたんだなと改めて思うことが出来た。

その後は、直ぐに印刷部数の会議なんかで顔合わせするようになって…、
何か指輪見てるのが辛くて、指輪の存在を忘れて…、
あぁ、そうか。辛いのが嫌で、胸が苦しくなるから桐嶋さんが苦手だったんだ……。

そこまで考えて、あっと気が付いた。

それはつまり、こうなる以前から俺は桐嶋さんが好きで、でも桐嶋さんにはパートナーがいるから、諦めようとして、忘れた?記憶に無意識に蓋をした?

気付けば気付くほど、俺の顔は赤く染まっていく。

あれ、あの初めてあったときはつまり、桐嶋さんの言うように高野の事が依存だったなら…、

桐嶋さんを好きになった瞬間だから、忘れられなかったとでも言うのか!?

「ウソ、だろ?一目惚れなんて…」

口に出して言えば、余計に赤くなり、あぁあああああ―――!!!と頭を抱えた。

「んー、お兄ちゃんどうしたの?」

「あっ、あぁ、ひよ、悪い…」

「んー?お兄ちゃん、顔真っ赤!大丈夫?」

「あぁ、大丈夫大丈夫…」

納得のいってないひよを再び寝かしつけると、俺は桐嶋さんが帰ってくるまで、赤くなった顔をもて余した。

end

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