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私と五条先生が同じ任務に組まれることはまずない。理由としては、五条先生が特級呪術師だから。余程のことがない限りサポートも不要なのだ。二つ目の理由としては私と五条先生は相性が悪い。術式的にというよりは私が弱いから。五条先生は戦いに集中出来ず私を守ることになりこれでは本末転倒もいいところだ。私が任務をヘマして手助けとして五条先生が派遣されることはあっても、逆はない。
だからこうして今一緒に車に乗っていることが不思議で仕方なかった。

「休みの日にごめんね。補助監督も今人手不足みたいでさ」
「いえ。気にしないで下さい」

簡単に状況を説明すると、いつもなら補助監督さんの運転で任務地に向かうが今日はみんな出払っていて誰もいなかった。そこで休みをとっていた私が呼び出され、私が補助監督さんの代わりに車を出して五条先生を任務地に送っているというわけだ。

運転するのは嫌いではない。この車は高専のもので運転するのは初めてだが中々運転しやすい。これなら山道だってへっちゃらだ。まあ、今回の場所は墓地なんだけど。
助手席に座る五条先生に着きましたと伝えて私も外に出る。明らかに呪いの気配がゾクゾクとした。これは一級の呪霊がいる。ちらりと彼を見たがいつもと変わらない様子だった。

「私も行きます?」
「僕ひとりで大丈夫だよ」

そうですよねと心の中で返事をした。私の手なんか借りなくても彼は強い呪術師なのだ。私がついて行っても何も手伝えないのが現実だ。どんどんと自虐してしまう。ぶんぶん首を横に振って前を向いた。

「それでは、帳下ろしますね」

顔の前に指を二本立てる。
ここで私が出来ることは、彼を信じてここで待つことだけだ。

「闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」

私と五条先生の間に結界が張られる。墓地全体を夜に包み込む。五条先生に、お気をつけてと小さな声で呟いた。聞こえてないだろうなと思いながら彼の背中を見つめていると不意に彼が振り返った。
私の不安を消し去るように笑い手をこっちにひらひらと振る。

「すぐ戻るよ」

ああもう。狡い。



どれくらいの時間が経っただろうか。先程までの呪霊の圧が消えた。ふと上を見上げると私が張った帳が上がった。五条先生の姿を見つけて駆け寄り近づく。お疲れ様でしたと声をかけ怪我とかしてないか見るものの変わった様子は何一つ無かった。この人は本当にすごい。

「車の中で待っててよかったのに」
「そういうわけには…」
「待っててくれてありがとう」

ぽんぽんと頭を撫でられて車に乗り込む。私も慌てて運転席へとドアを開けた。たしか、今日はこの一級案件だけだったはずだ。ちらりと彼を盗み見てシートベルトをつけた。

「それじゃあ、高専戻りますね」
「待った。僕 お腹空いちゃった。近くのコンビニ寄ってくれる?」
「わかりました」

ナビで近くのコンビニを見つけてそこに向かった。到着すると彼はまたちょっと待っててと車を降りた。私も行こうと思っていたけど、まあお昼ご飯ぐらい高専の食堂で済まそうと思い降りるのをやめた。すぐに車に戻った彼はビニール袋いっぱいに買い込んでいた。そんなにお腹空いていたのか。
次こそ高専に戻ろうとナビを設定していると彼の長い指が高専とは違う場所を目的地に設定する。ここに行けと言うことか。彼の顔をじっと見たがにこにこ笑われ何も言わず車を出した。五分ぐらい運転して着いた場所はどこにでもありそうな公園だった。なんだってこんな場所に用があるのだろうか。わからず首をかしげていると隣に彼はいなくて、運転席側のドアが開いた。

「天気もいいし、ピクニックしよう」

私の返答も聞かず車から出るよう手を引かれてしまい日当たりの良いベンチに二人で座った。この公園には小さな子供が数人遊びに来ていた。砂場で山を作っていたりブランコに乗っていたりと楽しそうだ。

はい、どうぞ。と先程のコンビニ袋からたまごサンドとりんごジュースを取り出し私にくれた。私の好きなものを把握済みだ。慌てて財布を取り出すとこれぐらいいいよと受け取ってはくれなかった。素直にありがとうございます、と言うとどういたしましてと返ってきた。

「せっかくの休みに運転させちゃったお詫び」
「気にしないで下さい。今日は特に予定もなかったので」
「うん。だからこうやって連れ出してるんだけどね」

カツサンドを食べる五条先生を見て私もたまごサンドを食べた。おいしいや。

「僕たちって同じ任務こなすことないじゃん」
「そうですね」
「休みだって合わないし。僕が合わしても美沙はいつの間にか休み変えて任務に出てたりするしさ」
「それは五条先生も同じですよ?」
「そっか。まあ、だから今回補助監督を美沙にお願いしたんだよ」
「職権乱用?」
「あははっ。それは酷いな」

冗談です、と言い二つ目のたまごサンドを食べた。
ぽかぽかと気持ちの良い日差しを浴びながら、また子供たちの無邪気に遊ぶ声を聞きながらふと思う。こんな空間が存在するなんて、幸せだなと。それは呪術師なんて忘れてしまいそうなぐらい穏やかに時が過ぎていった。

「今度は私が五条先生に運転お願いしたいですね」
「デートのお誘いならいつでも歓迎だよ」
「野薔薇ちゃんと買い物行く時とか?」
「なんで野薔薇?それ僕じゃだめなわけ」

見るからに甘そうなカフェオレを飲む五条先生。先程まで一級の呪霊を相手にしていた人とは思えない。周りから見たら私達はごく普通の人になっているのだろうか。

「ほんと、穏やかだ」
「そうですね」
「任務は完璧に終わらせたし、美沙も怪我してないし、僕がハラハラすることも無い。もういっそのこと補助監督になるっていうのはどう?」
「本気で言ってるなら帰りは車に乗せませんよ」
「それは穏やかじゃないね」
「五条先生。意地悪しないで下さい」

機嫌を悪くするフリをしたら五条先生は諦めてごめんと謝った。
私はどれだけ弱くても、祓う力を持っている限り戦い続けたい。微力でも、塵も積もれば山となる精神で五条先生や他の呪術師を手助け出来たらそれでいい。できるだけ近くで支えたい。補助監督という役割では私にとっては遠すぎるのだ。そのことを今日実感してしまった。帳の奥にはいけない。実際、今日は自分で五条先生との間に壁を作ってしまったことにとても不安で仕方なかった。彼は強い呪術師だから、心配も何も無用なのにも関わらず。

「でも、僕がいつも美沙のこと考えてるってことはちゃんと覚えておいて」

いつにもなく真剣な彼を見て私は何も言えなかった。買ってもらったりんごジュースを飲んだ。甘いや。