組替良成に関する証言【K.JIRO】
登校初日、これからの生活に胸を膨らませながら教室の扉を開けると、教室の一角が宗教画みたいになってた。父さん、母さん、雄英高校はすごいところです。
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教室の片隅で窓からの木漏れ日に照らされていた天使みたいに美しい男の子は、同じ体操服を着てるってのにまるで高級ブランドのお洋服を纏ったモデルさんみたいで。
顔だけじゃなくてすらりと伸びた手足に、よく鍛えられていることが分かる体つきも頭から足の先までまるで芸術品みたいだった。
「次、組替と砂藤」
名前を呼ばれて彼がスタートラインに立つ。
砂藤はたしかあっちのガタイがいい男子だから、あの芸術品は組替くんというらしい。
まるで絵画のように美しいクラウチングスタートの体勢からスタートの合図に合わせてしなやかな足が躍る。
一体どんな個性なんだろう。
さっきの飯田ほどじゃないけれど、普通に走るにしては速すぎる速度で彼はゴールした。
それからの測定も一体どんな個性なのか、組替くんはかなり良い成績を収めていく。
特別見た目の変化もないから、個性の見当がつかない。
気付けばウチだけじゃなくてクラスのほとんどが彼に注目していたみたいで、葉隠と芦戸あたりがキャイキャイと静かに騒いでるのが聞こえてきた。
すべての測定が終わって、除籍は合理的虚偽だとかってひと悶着あったけど、その間も組替くんは優雅に微笑んでいるばかり。
総合5位の成績も特別喜ぶことなく、当然とばかりに微笑んでいる。
そんな彼に葉隠が声をかけた。
「ねえ!組替くんって言うんだよね、体力測定すごかったよー!
あ、私は葉隠透!見ての通りの透明人間だよ!よろしく!」
さすがコミュ強。
突然元気よく声をかけてきた透明人間にはさすがに驚いたのか、彼はきょとんとした表情でいくつか瞬きをしたあと、やはり柔らかく微笑んだ。
「ふふ、ありがと。こういうのは得意なの。あたしは組替良成よ。
よければ良ちゃんって呼んでちょうだい」
「へっ」
その話口調に、彼のことが気になっていたのか耳をそばだてていた全員の動きが止まる。
まさに衝撃。
「おっおかまちゃんなの…!?」
固まる葉隠に代わって芦戸がここにいる全員の声を代弁する。
「あら驚かせちゃったかしら?
なあんて、あたしが喋るとみんなびっくりしてくれるから、
いつ話し出そうか迷ってたの。楽しいリアクションをありがとね」
そう言ってクスクスと笑う彼、いや彼女?はそれでも変わらず優雅で、芸術品のような美しさを誇っていた。
父さん、母さん、やっぱり雄英高校はすごいところです。