4階の攻防

「負けたくないのよ」


そう言い放ったりょーちんの腕がみるみる太くなっていく。
綺麗な顔に似合わない屈強な肉体へと自らを変化させたその姿に、俺と耳郎はその場を任せて核兵器と瀬呂が待つであろう4階へ走った。




耳郎の個性で見つけた部屋へと進めば、テープが張り巡らされた奥に核兵器が見えた。
だが、瀬呂の姿が見えない。


「上鳴っ!上!!」


壁にイヤホンを挿した耳郎が告げるまま、放電させた手のひらを勢いよく上に向ける。


「うっわあぶね!」
「さんきゅ耳郎!」


電撃は避けられてしまったが、こちらも奇襲を防ぐことができた。
そのままじりじりと距離をとって睨み合う。


「これ、どうするよ」
「ぶっちゃけうちらの個性だと瀬呂を捌きながらこのテープを回避して核兵器に触るってのは厳しいと思う」
「まずは瀬呂を無力化するってことでおーけー?」
「OK」


ざっくりどう攻めるかの方針を決めてから俺と耳郎は瀬呂を挟むように左右へと別れる。
耳郎は遠距離で、俺は懐を狙って。

瀬呂から放出されるテープと張り巡らされていたテープの両方を避けながら、互いに隙を作り合う。


聞こえるオールマイトのアナウンス。
やばい、あと5分しかねえ。


りょーちんは俺たちに勝利を託して、1人で切島を抑えてくれてるんだ。
ここでこのままタイムアップするわけにはいかない。
仕掛けなければ、ならない。



「瀬呂ォ!!」

思いっきり叫んで、意識をこちらに向けさせてから全力で瀬呂に向かって走る。
全身に纏った電気がテープが貼りつくのを拒む。


瀬呂の意識が一瞬こっちに集中した、その瞬間を見逃さずに耳郎が背後から爆音を叩き込んだ。



「ナイス上鳴!」
「おう!…あっヤベ」


あとは部屋中のテープをくぐり抜けて核兵器に触れるだけ、と全身の電流を切れば静電気で周りにあったテープ達が貼りついて身動きができなくなった。


「ハァ!?油断してんなよバァーカ!!」
「返す言葉もございません!!」


呆れ顔の耳郎が核兵器にタッチすれば、オールマイトによる俺たちヒーローチームの勝利宣言が響いた。


***


「うっわ、りょーちん血ヤバくね!?」
「うわあ2人ともボロボロじゃん」


爆音の衝撃から復活した瀬呂と共にりょーちんと切島が戦っていたフロアに降りれば、激闘の跡が残る2人が地面に転がっていた。

切島に比べて圧倒的に血まみれで重症っぽいりょーちんに思わず駆け寄る。


「生きてる!?」
「まあ、なんとかね…。勝ってくれてありがと」
「コイツ最後油断したけどね」
「バラすなあー!」



怪我自体は自分の個性で治したらしいけど、血を流しすぎてふらふらなりょーちんを支えてモニタールームに戻れば、オールマイトからの講評のお時間。
案の定俺の最後の油断に関しては指摘が入ったけど、その他の評価はまあまあだったんじゃないだろうか。

ぎりぎりの体調で講評を聞ききったりょーちんを許可を取って座らせると、すぐに目を閉じてぐらぐらと頭が揺れ出す。


俺たちの勝利の貢献者だ、労らなきゃな。


隣に陣取ってその頭をそっと俺の肩に寄りかからせた。
モニターは見辛くなってしまったけど、男でも見惚れちゃうようなその綺麗な顔がすぐ近くにあるっていう状況はなかなか悪くなかった。