#3 隣の人がハロを助けてくれました。
『ん?あそこに何かある・・・』
動物病院の夜勤明けの帰り道、コンビニで前から気になってたスイーツを2つ購入しルンルン気分で帰宅。アパートのゴミステーションを横切る時、視界の端に何か見えた。
まだ外は薄暗かったため、ハッキリとは見えない。誰かがゴミステーション横にゴミを置き去ったのだろうか、カラスの被害を考えるとこのまま放置は良くない。確認すべく近づくと徐々に形が見えてきたが、何かがおかしい。ゴミのフォルムじゃない。
これは...
『......人の足?』
そう。はっきり見えたのは人間の足。投げ出されるようにゴミステーションの奥から出ているのだ。上半身は影に隠れて、その身があるのかも分からない。
アァアアアとやばいもの発見しちゃったと慌てふためく。死んでるかもしれない、でも生きてるかも、いやこんな場所に居るのってこの米花町では死んでる可能性が高そうだけど、もしかしたら生きてるかもしれない!
とりあえず確認して万が一は警察に通報と考え、勇気を出してゴミステーションの奥を覗き込む。
『えっ.....このひと』
転がっていたのはお隣さんでした。
『え、安室さん?生きてる?あ、生きてる良かった...』
ゴミステーション奥に転がってたのは、隣の部屋に住む安室透だった。
一体なにがあったというのか。とりあえず怪我は無いかと確認し、ただ寝ているだけで安心する。救急車は必要なさそうだ。
ホッと息を吐き、よく彼を見るとボロボロだった。着ているグレーのスーツがヨレヨレで薄汚れている。前に見た綺麗な金髪も輝きが失われ、くすんで見える。目の下にクマも飼っているようだ。
『(帰って来たけど力尽きちゃったのかな...。とりあえす起こそう)』
安室の横に膝をついて身体を揺さぶる。
『安室さ〜ん、起きてください。起きて自分の部屋に帰りましょーー』
「ゔ......」
『安室さん、ここ外ですよ!おはようございます!!!』
「ぅゔ〜〜ん...」
眉間にシワを寄せウンウン唸る安室の目が薄っすらと開いた。
「あ、れ...小鳥遊さん...?」
『起きました?安室さんここ外ですよ、風邪引いちゃうので部屋で寝てください』
「......え?、外っ??!」
『うわぁ!』
急にガバッと体を起こした安室にビックリして、彼女が後ろにひっくり返りそうになる。
「あっ! す、すみません!」
『ウブッ!』
グッと腕を引っ張られた反動で安室の胸に顔からダイブする。勢いが良すぎて潰れたような声が出た。
「...大丈夫ですか?」
『イテテ...』
「あぁ、鼻が赤くなってしまいましたね...本当にすみません」
顔を上げるとすぐ近くに安室の顔があり、心配そうにこちらを見ていた。
近すぎる距離に思わず顔が熱くなるが、すぐさま俯き彼と少し距離を取る。
『大丈夫です。ところで安室さん、こんな場所で寝るのは良くないですよ』
「あー...あはは、すみません」
『ここまで来たなら眠くてもきちんと部屋に帰らないと!見たところ目の下に立派なクマを飼っているようですし。ハロくんが悲しがりますよ』
「はい...。すみません」
『安室さんがまた寝ないように、部屋に入るまで見届けるので一緒に帰りましょう』
「お手数をお掛けします」
『あはは、安室さん謝ってばっかりですね』
膝の汚れをはらい、安室が立ち上がるのを見てアパートの入り口へ向かう。
エレベーターに乗り込み、上へあがる時も安室は眠そうだった。
『安室さん、起きてますか?』
「......はい」
『お家に帰ったらゆっくり休んでくださいね。お疲れのようですし』
「...何で僕があそこで寝てたのか聞かないんですか?」
『え、仕事で疲れて力尽きちゃったんじゃないですか?』
「いや、まぁ...。そんな感じですけど」
『それとも、色々聞いたほうがいいですか?うーん、例えば、ハロくんはいつ頃来られますか?とか』
「!!」
『前に連れて来てくださいと伝えてから結構経っちゃいましたね...』
「......」
『安室さん、ハロくんを大切にされてたので変な心配は要らないと思ってたんですけど、かなり期間が空いてしまったので気になってしまい、わたし...安室さんがちゃんと家に帰ってるのか様子を伺ってました...』
「え?」
『あっ!!別に部屋を覗くとかじゃないです!!部屋の明かりがついてるかなとか、バッタリ会わないかなとそういった感じで。でも安室さんが帰ってきてる様子は無かったし、なんだかハロくんも部屋に居ない気がして...。やっと見つけたと思ったら、安室さん外で寝てたし...』
「すぐに連れて行かず、すみませんでした。急に長期の仕事が立て込んでしまいハロも知人に預けてたんです」
『何か事情があるのかなとは思ってました。安室さん、...動物さんが子供の時期に受ける影響ってすごく大きいんです。お家の環境作りはもちろん、まだ子犬で保護したハロくんは予防関係もしっかりしていかなければなりません。生き物と暮らすのは時間もお金も必要になりますが、始まりをしっかり整えてあげるのが、一緒に暮らす安室さんのためでもあり、ハロくんの将来を守るためでもあるんです』
「ハロの将来を守る...」
『はい。ハロくんの将来を安室さんが守るんです』
「......泣かないでください」
『泣いてません』
「そんなに擦ると目が傷つきます」
泣くつもりは無かったのに、話してるうちに勝手に涙が溢れてきた。
グスグス鼻をすすり、溢れる涙を腕でゴシゴシ拭ってると、優しく腕を捕まれ真剣な青い瞳が顔を覗き込む。
「正直あなたがこんなに心配してくれてるとは思いませんでした」
『ズビッ......すみません。私、うるさいですね』
「うるさい?どうしてです?」
『だって、いくら私が獣医だからって、隣の部屋のたった数回会った奴に愛犬について口出しされたうえに、突然勝手に泣き出すし...やばい奴ですよ』
「そんなことありません。あなたはこんなにもハロに親身になってくれてるじゃないですか。それこそ、たった数回会っただけなのに」
『それは、職業病というか、動物が好きというか、ハロくんも好きというか...』
「僕はあなたのように優しい方がハロを気にかけてくれるのが嬉しいです」
『うっ...グスッ』
「小鳥遊さん、明日は出勤されますか?」
『え、あ、はい。朝から居ますけど』
「明日ハロを連れて伺います」
『へ』
「午前中になりますが、大丈夫ですか?」
『だ、だいじょうぶです!!』
「はい、必ずお伺いします」
安心したように笑う彼女にホッとする。
動物を、ましては子犬なんて今まで育てた経験やこの方面の知識が薄い安室は愛犬への意識を改め、少しでも勉強しようと心に決めた。
「帰りましょうか」
エレベーターを降りてすぐの場所で話をしていたため、彼女に声を掛けると自分たちの部屋が並ぶ方向に向かって歩く。彼女の部屋の前まで来ると、安室はクルリと彼女に向き直った。
「今日は色々とご迷惑やご心配をお掛けしました」
『い、いえ、こちらこそ』
「小鳥遊さん、おやすみなさい。ではまた明日」
チュッ
『は』
ガチャッ、...パタン
別れの挨拶を言った安室はそっと彼女に近づき、その丸い額に優しくキスを落とし、自分の部屋へ帰っていった。
残された彼女は未だ状況を理解していない。
『ちゅ......???』
動物病院の夜勤明けの帰り道、コンビニで前から気になってたスイーツを2つ購入しルンルン気分で帰宅。アパートのゴミステーションを横切る時、視界の端に何か見えた。
まだ外は薄暗かったため、ハッキリとは見えない。誰かがゴミステーション横にゴミを置き去ったのだろうか、カラスの被害を考えるとこのまま放置は良くない。確認すべく近づくと徐々に形が見えてきたが、何かがおかしい。ゴミのフォルムじゃない。
これは...
『......人の足?』
そう。はっきり見えたのは人間の足。投げ出されるようにゴミステーションの奥から出ているのだ。上半身は影に隠れて、その身があるのかも分からない。
アァアアアとやばいもの発見しちゃったと慌てふためく。死んでるかもしれない、でも生きてるかも、いやこんな場所に居るのってこの米花町では死んでる可能性が高そうだけど、もしかしたら生きてるかもしれない!
とりあえず確認して万が一は警察に通報と考え、勇気を出してゴミステーションの奥を覗き込む。
『えっ.....このひと』
転がっていたのはお隣さんでした。
『え、安室さん?生きてる?あ、生きてる良かった...』
ゴミステーション奥に転がってたのは、隣の部屋に住む安室透だった。
一体なにがあったというのか。とりあえず怪我は無いかと確認し、ただ寝ているだけで安心する。救急車は必要なさそうだ。
ホッと息を吐き、よく彼を見るとボロボロだった。着ているグレーのスーツがヨレヨレで薄汚れている。前に見た綺麗な金髪も輝きが失われ、くすんで見える。目の下にクマも飼っているようだ。
『(帰って来たけど力尽きちゃったのかな...。とりあえす起こそう)』
安室の横に膝をついて身体を揺さぶる。
『安室さ〜ん、起きてください。起きて自分の部屋に帰りましょーー』
「ゔ......」
『安室さん、ここ外ですよ!おはようございます!!!』
「ぅゔ〜〜ん...」
眉間にシワを寄せウンウン唸る安室の目が薄っすらと開いた。
「あ、れ...小鳥遊さん...?」
『起きました?安室さんここ外ですよ、風邪引いちゃうので部屋で寝てください』
「......え?、外っ??!」
『うわぁ!』
急にガバッと体を起こした安室にビックリして、彼女が後ろにひっくり返りそうになる。
「あっ! す、すみません!」
『ウブッ!』
グッと腕を引っ張られた反動で安室の胸に顔からダイブする。勢いが良すぎて潰れたような声が出た。
「...大丈夫ですか?」
『イテテ...』
「あぁ、鼻が赤くなってしまいましたね...本当にすみません」
顔を上げるとすぐ近くに安室の顔があり、心配そうにこちらを見ていた。
近すぎる距離に思わず顔が熱くなるが、すぐさま俯き彼と少し距離を取る。
『大丈夫です。ところで安室さん、こんな場所で寝るのは良くないですよ』
「あー...あはは、すみません」
『ここまで来たなら眠くてもきちんと部屋に帰らないと!見たところ目の下に立派なクマを飼っているようですし。ハロくんが悲しがりますよ』
「はい...。すみません」
『安室さんがまた寝ないように、部屋に入るまで見届けるので一緒に帰りましょう』
「お手数をお掛けします」
『あはは、安室さん謝ってばっかりですね』
膝の汚れをはらい、安室が立ち上がるのを見てアパートの入り口へ向かう。
エレベーターに乗り込み、上へあがる時も安室は眠そうだった。
『安室さん、起きてますか?』
「......はい」
『お家に帰ったらゆっくり休んでくださいね。お疲れのようですし』
「...何で僕があそこで寝てたのか聞かないんですか?」
『え、仕事で疲れて力尽きちゃったんじゃないですか?』
「いや、まぁ...。そんな感じですけど」
『それとも、色々聞いたほうがいいですか?うーん、例えば、ハロくんはいつ頃来られますか?とか』
「!!」
『前に連れて来てくださいと伝えてから結構経っちゃいましたね...』
「......」
『安室さん、ハロくんを大切にされてたので変な心配は要らないと思ってたんですけど、かなり期間が空いてしまったので気になってしまい、わたし...安室さんがちゃんと家に帰ってるのか様子を伺ってました...』
「え?」
『あっ!!別に部屋を覗くとかじゃないです!!部屋の明かりがついてるかなとか、バッタリ会わないかなとそういった感じで。でも安室さんが帰ってきてる様子は無かったし、なんだかハロくんも部屋に居ない気がして...。やっと見つけたと思ったら、安室さん外で寝てたし...』
「すぐに連れて行かず、すみませんでした。急に長期の仕事が立て込んでしまいハロも知人に預けてたんです」
『何か事情があるのかなとは思ってました。安室さん、...動物さんが子供の時期に受ける影響ってすごく大きいんです。お家の環境作りはもちろん、まだ子犬で保護したハロくんは予防関係もしっかりしていかなければなりません。生き物と暮らすのは時間もお金も必要になりますが、始まりをしっかり整えてあげるのが、一緒に暮らす安室さんのためでもあり、ハロくんの将来を守るためでもあるんです』
「ハロの将来を守る...」
『はい。ハロくんの将来を安室さんが守るんです』
「......泣かないでください」
『泣いてません』
「そんなに擦ると目が傷つきます」
泣くつもりは無かったのに、話してるうちに勝手に涙が溢れてきた。
グスグス鼻をすすり、溢れる涙を腕でゴシゴシ拭ってると、優しく腕を捕まれ真剣な青い瞳が顔を覗き込む。
「正直あなたがこんなに心配してくれてるとは思いませんでした」
『ズビッ......すみません。私、うるさいですね』
「うるさい?どうしてです?」
『だって、いくら私が獣医だからって、隣の部屋のたった数回会った奴に愛犬について口出しされたうえに、突然勝手に泣き出すし...やばい奴ですよ』
「そんなことありません。あなたはこんなにもハロに親身になってくれてるじゃないですか。それこそ、たった数回会っただけなのに」
『それは、職業病というか、動物が好きというか、ハロくんも好きというか...』
「僕はあなたのように優しい方がハロを気にかけてくれるのが嬉しいです」
『うっ...グスッ』
「小鳥遊さん、明日は出勤されますか?」
『え、あ、はい。朝から居ますけど』
「明日ハロを連れて伺います」
『へ』
「午前中になりますが、大丈夫ですか?」
『だ、だいじょうぶです!!』
「はい、必ずお伺いします」
安心したように笑う彼女にホッとする。
動物を、ましては子犬なんて今まで育てた経験やこの方面の知識が薄い安室は愛犬への意識を改め、少しでも勉強しようと心に決めた。
「帰りましょうか」
エレベーターを降りてすぐの場所で話をしていたため、彼女に声を掛けると自分たちの部屋が並ぶ方向に向かって歩く。彼女の部屋の前まで来ると、安室はクルリと彼女に向き直った。
「今日は色々とご迷惑やご心配をお掛けしました」
『い、いえ、こちらこそ』
「小鳥遊さん、おやすみなさい。ではまた明日」
チュッ
『は』
ガチャッ、...パタン
別れの挨拶を言った安室はそっと彼女に近づき、その丸い額に優しくキスを落とし、自分の部屋へ帰っていった。
残された彼女は未だ状況を理解していない。
『ちゅ......???』
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