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次の日の朝、いつもより早く起きてしまった私は外の空気を吸おうと思い家の外に出た。昨日の夜にも雪が降ったのか膝あたりまで積もっている雪。空を見上げると少し曇っていて、また雪が降りだしそうな天気だった。
昨日、炭治郎と別れたあと頬を真っ赤にして帰って来た私を見てお母さんが何かを察したのか「お赤飯でも炊こうかしら?」と言って本当に炊こうとしたので全力でそれを止めるのに疲れはててしまった。お父さんもお父さんでどこから仕入れたのかは分からないが、家に帰ってくるなり「今日炭治郎と良い雰囲気になってたそうだな……?」と、背後に般若を纏いながら問い詰めてきたのでそれを宥めるのも大変だった。お陰で夜はゆっくり眠ることができたんだけどね……。

私は炭治郎に対する思いが徐々に形を形成しつつあった。元々炭治郎が気になっていたからというのもあるんだろうけど、昨日の一件のあと炭治郎を思い浮かべるだけで胸がキューッと苦しくなって、私の前世の経験からするとこれら『恋』というものなのではないでしょうか。前世ではお母さん大好きマンだったから他の男子を視界に入れる余裕がなくて恋なんてしたことなかったんだけど……。もしもこれが恋だとするならば、この恋は私にとっての『初恋』だ。


「……って、何考えてるの私!!!」


桃色でいっぱいの思考を振りきるために頭を横にブンブンッと振った。
炭治郎……次はいつ来るんだろう。
そんなことを考えながら炭治郎の家がある山の方を見つめる。そっちの方ではこっちよりも雲がかかっていて、今にも雪が降り始めそうだ。きっと山は冷えるんだろう。禰豆子ちゃん大丈夫かな。風邪引かないといいんだけど……。
『炭治郎達の家の方は冷える』そんなことはずっと昔から分かっていて今更の筈なのに、どうしてか今日の私は無性に彼らが心配になって仕方がなかった。…………胸騒ぎというか、嫌な予感がするというか。
この体に生まれてから、私の『勘』はよく当たった。いつもバシバシ当てるというよりかはふと思い立ったときや「これだ」と本能的に思ったときなんかは百発百中で当たる。カッコつけて言うと『第六感』が良い…みたいな。
今のこの感じはまさしくそれだ。自分の勘を信じるとしたら、今、炭治郎達は大変な目にあっているんじゃ────
その考えが頭の中を巡った途端に、吐き気を催すほどの気持ち悪さが襲いかかってきた。……これは間違いない。今、炭治郎達は大変な目にあってるんだ!!!
私は十分な防寒もせずに家を飛び出した。家ではまだ、何も知らない両親がぐっすりと眠っていた。

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