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幼い頃から、所謂いわゆる私は霊的なものを寄せ付けやすい体質だったようで、毎日のように親に「あのおじさん頭から血出てる〜」や、「さっきからあそこにいるお姉ちゃんが私に手招きしてる」など言い、人には見えないものが見えていた。
それが普通のことではないと自覚したのが小学2年生の頃。
教室に入ってきた先生の後ろにピッタリとくっついて入ってきた老人に驚き、隣の席の男の子にそれを告げると、その子は「おじいさんなんていないよ?」とキョトンとした顔で語り、私はようやくここで知ることができたのだ。
どうして親がそれを私に教えようとしなかったのか。
両親曰く、霊的なものは怖い≠ニ強く認識してしまうほど良くないので、私が霊を人と思い怖がらないようにしてくれていたらしい。
私としてはもっと早く教えてほしかったが。
むしろ考えてみたら可笑しい話ばかりなのだ。踏み切りのど真ん中で横たわってこちらを見ている女の人がどこにいるんだ。
幼かったから、なんて言ってしまったら終わりだが今振り返ってみても思う。
…………私はバカか!?
今では霊的なものを無視するということを覚えた私は、平和にこの高校生活2年間をまずやり遂げた。それなのに、問題はこの最後の高校生活一年間だったのだ。
今までが平和だったぶん、それが渦を巻いて一気に降りかかってくるかのようにその非日常は訪れたのだ。
────ゆっくり、じわじわと。
その恐怖と隣り合わせと言っても過言ではない非日常の中で、まさかあんな人達と恐怖を共有していくだなんて、数ヶ月前の私は想像もしていなかった。
ここで余談を挟むのだが、私は霊的存在を否定している人を見るとムカムカするのだ。
八つ当たりになってしまうが、私はこんなにも苦労して日々その存在を苦しいほど押し付けられているというのにそれを否定されるなんて。
私の数十年の頑張りと人生を否定されるのと同じようなものだと思った。
だから、決まって私はその人達に言うのだ。


「ねぇ、幽霊ってさ、
 ──……見えなくたってそこにいるよ」


それじゃあ、非日常の幕開けといこうか。

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