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「桜ヶ丘中学校2年、小野寺納豆です。今日からイナズマジャパンのマネージャーとして皆さんのサポートをさせて貰います。これからよろしくお願いします!」
「……と、言うわけだ。それではこれから選考試合のチーム分けを発表する。」

響木さんの後を着いて体育館に行き、体育館の中に入るとそこには朝出会った円堂さんと虎丸さんが居た。お互いに驚きのあまり固まってしまったけど、直ぐに自己紹介をしてイナズマジャパン候補選手の皆さんに頭を下げると、パチパチ…と拍手を貰った。
そして響木さんの切り替えにより、選考試合のチーム分けが発表されていく。心なしか生き生きとした表情の彼らは発表されていくチームに分かれていく。私は彼らのその様子を自分の昔の思い出と重ねながら、遠目で見守っていた。


おかあさん! おとうさん! わたし、このあいだ〇〇君とサッカーで勝負してかったんだよ!


凄いじゃないか! ……納豆、沢山頑張ってたもんな。


次の日曜日には私とお父さんにも納豆のサッカーを見せてくれないかしら?


うん! おかあさんとおとうさんに見てもらいたいっ!


――その会話をした次の日、両親は亡くなった。結局私のサッカーを両親が見ることは無かったし、私が再び公園でサッカーをすることも無かった。
私の両親は仕事の都合上、家を空けることが多く、あの時のように両親と一緒に居られることは少なかった。だから両親が揃ってサッカーを見に来てくれると言ってくれたあの日、本当に嬉しくて堪らなかったのに。
両親は、ようやく私がサッカーをすることを受け入れて始めてくれていた。……それなのに。
お葬式が終わったあと家に帰ると、両親に初めて買って貰ったサッカーボールが玄関に転がっていて。「日曜日のために!」と言って私が一生懸命磨いたからか、土の汚れ一つ着いていなかった。なんとなくそのボールを手に取って、ボールを見つめる。
――約束……したのにな。
嫌な考えばかりが頭をよぎった。このたった一つのボールがきっかけで両親は亡くなってしまったのではないか、と。そう思ったら、やり場のない怒りがふつふつと湧き上がってきて、私は「あ゙あ゙あ゙ッ!」と叫んでボールを部屋の壁に思い切り投げ付けた。バンッと跳ね返ったボールは私の顔のすぐ隣を横切り、棚の上に置かれている花瓶に当たってしまい、ガシャンッと花瓶が落下の衝撃で割れた。床には水と花と花瓶の破片に、サッカーボール。
そして私は、サッカーから離れていった。


「あー! 今からもう明日が楽しみだぜ!」
「フッ……お前はいつもそうだな、円堂。」
「仕方ないだろぉ〜。相手が鬼道達だから尚更ワクワクするんだよ!」

……でも、もしかしたら。
私はこの人達のサッカーをきっかけにまた、サッカーの世界に戻ることが出来るかもしれない。
あのとき確かに捨てたサッカーは少しづつ、だが確実に、私の元に戻りつつあったのだ。

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