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「それにしてもなんだか今日は機嫌が良いみたいじゃないか、円堂。」
「何だよ鬼道〜。俺、そんな風に見えるか?」

監督に呼ばれて朝から雷門中の体育館に集まった俺達。久しぶりに会う奴らと挨拶を交わしたり、初めて会う奴らの名前を聞いたりして監督が来るのを今か今かと待ち構えていた。こんなに凄ぇ奴らが集められたんだからきっと何かあるに違いない!
また、皆とサッカーが出来るのかもしれないと胸を高鳴らせていたとき、隣に居た鬼道がいきなりそんな事を俺に言ってきた。俺は鬼道の言葉に首を傾げる。

「あぁ。機嫌の良さそうな表情かおをしている。今日は朝から何かあったのか?」
「久しぶりに吹雪達と会えたこと!!」
「それは勿論、俺も嬉しい。だがそうではなくて、お前が体育館に入ってきた瞬間から既に表情が緩みきっていたぞ。豪炎寺や風丸とも『何かあったんじゃないか』と話していたんだが……俺達の勘違いだったか?」
「えーーー……俺そんなだらしない顔してたかあ? 朝……朝あったことと言えば……虎丸にあったことと〜…………あ!」

今日、起きてからここに来るまでの出来事を思い返していたら心当たりのある出来事が一つ思い当たった。虎丸と会って話していた時に、急に曲がり角から走りながら現れた女子とぶつかって雷門中まで俺と虎丸とその子の三人で喋りながら来たことだ。確か、名前……『納豆』って言ってたよな。もしかして俺の顔が緩みきってた(?)のってそれが原因か?

「それが理由かどうかは分からないけど、さっき学校に来るまでに女子とぶつかった!」
「ぶつかった? お前もその子も怪我はしなかったか?」

俺の話を聞いた鬼道は、少し顔を歪ませて怪我をしていないかと心配してきた。だけど俺が「全然大丈夫!」と言うと、ホッとしたような顔に戻った。いつも思うけど鬼道や風丸や豪炎寺は少し心配性すぎるような気がする。いや、心配してくれるのは嬉しいんだけどなんだかなー……母ちゃんが増えたみたいでむず痒いんだよな! あ、そうだ。《心配》といえば納豆もやたら心配してきたなぁ。俺とぶつかったとき吹っ飛ばされたのは納豆の方なのに、ずーっと申し訳なさそうな顔してた。まあ、知らない奴にぶつかっちまったら申し訳なくなるのも当たり前かもしれないんだけどさー。あいつも風丸達と同じ感じがするぜ……。
でもあいつ、雷門中に用事があるって言ってたけど何の用事だったんだ? 今日は虎丸達と言い、知らない奴とよく会う日だ。全員良い奴みたいだから全然良いけど!
そんなことを思いながら、きっとこれから長い付き合いになるだろうこの面子を俺はぐるりと見渡した。
――そのとき。まるでタイミングを見計らっていたのかと言いたくなる位、丁度良いタイミングでガラリと体育館の扉が開かれ、そこには俺達が待っていた監督とマネージャー達が立っていた。

「監督!」

俺の声に反応して全員、入口付近に立つ監督の元に駆け足で集合する。

「全員集まってるか?」

俺達を見渡してメンバーの確認をする監督。だがそのとき、後ろから誰かがサッカーボールを俺達に向かって蹴り込み、そのボールを飛んできた方に鬼道が蹴り返した。俺達が何が起こったんだ、という眼差しで後ろを向くとそこにはあの真・帝国学園の時に出会った不動がニヤニヤとした笑みを浮かべて立っていた。不動の姿を目にして鬼道と佐久間が過剰に反応する。俺たちの間に不穏な空気が漂い始めたけど、監督は「これで全員揃ったな。」と言って俺達の反応はあくまでもどうでも良さげな態度だった。

「お前たちは日本代表の強化選手だ。」

監督から話される内容は、俺達がこれから世界を相手にして戦うということ。そのメンバーをこの22人の中から16人選び出すらしい。

「これから選考試合のチーム分けを発表するのだが……その前に、お前達に紹介する人が居る。」

《世界》という単語を聞いてテンションが高まっていた俺達は、監督の言葉に「え?」と固まった。紹介する人? そんな話、監督からも、マネージャーからも全く聞いてない。
キョトンとする俺達を他所目に監督が入口の外に向かって「入ってこい!」と声を掛ける。そうすれば当然、俺達の視線も自然と入口に集まるわけで。
そして、少し戸惑いつつも入口からひょっこりと現れたソイツは、凄く見覚えのある奴だった。

「「あー!!」」

俺と虎丸の驚きのあまり出てしまった声が偶然重なって体育館中に響き渡る。

「あの時の……!」

現れたソイツ――納豆も、驚く俺達の姿を見てそのパッチリとした目を大きく見開き、ポカンと口を開けて驚いていた。
……なんか、これからすっげー楽しくなりそうだな!




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本物の円堂君の心の中はもっと簡単な言葉で形成されていそうですね笑……←

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