バトルに負けたわけではないので、そこまで酷評されることはない。
ただ、予想していた通りボクの欠点を指摘された。
津波さんは、そう思ったんだ。
指摘したはいいものの、それ以上いい案が浮かばなかった僕はディランを真似ることにした。わからないことがあれば相談しろと、言っていた癖に彼が渡す答えは全て遠回しなもので、考える過程を重要視しているようだった。
「ヒワダタウンに付くまで、まだ時間はあるよね?」
「はい。……今のペースでいけば、3日後には到着します」
「期限はヒワダシティに到着するまで。僕から1つ課題を出すから、それに挑戦してみてくれる?」
断れないとわかっている癖に、拒否権のあるようなことを言っている。
「
生唾を飲む音が聞こえた。そんなに緊張することかな?
「仕切り直しの手段を考えてみよう」
「しきり……?」
「相手が欲しいなら少しぐらいなら請け負うよ。さ、先に進もうか」
ヒワダタウンに向かうとわかって、確認をしたが32番道路と、33番道路の間には繋がりの洞窟(どうくつ)と呼ばれる洞穴(どうけつ)があるらしい。内部はそんなに複雑ではないらしいが、できることなら半日で潜り抜けてしまいたい。1晩明かすと方向感覚が狂う可能性があるからだ。
先に行こうと進んだが、そういえば課題の件の答えを聞いていないな。いつ切り出そう。
僕の視線に気付いた光葉と目が合い、光葉の小さな肩が大きく跳ねる。リュックを担ぎなおした光葉は、頬っぺたを赤く染めて宣言した。
「やります! ボク、やり切って見せます……!」
決死の表情を浮かべて宣言した光葉に僕は苦く笑う。そんな風に身構えなくてもいいのに。
「うん、期待してる」
くしゃりと、小さな頭に手を伸ばして撫でる。光葉はびっくりした様子で手を離した僕の顔を見た。「嫌だった?」と、聞けば目を泳がせて「びっくりしただけです」と、答えた。……もうやらないほうがいいかもな。どうも、光葉に甘くなりつつある自分がいる。
「(面倒ごとに巻き込まれたと思ってるのに、どうして……)」
サトシと同じぐらい小さな背で頑張っている姿に心を動かされたのか。それとも……、
ヒワダタウンへ向かう道中の道は干上がっており、長らく雨が降っていなかったのだと予想された。
「僕の頭が馬鹿になったのかな。暦、間違ってない?」
「異常気象でしょうか……? すみません、ボクの調べ方が悪かったみたいで……」
真夏日のような暑さ、日差しに風音も参っている様子だった。ここ最近は換毛期もあって、毛が冬毛に変わりつつあった時期だから余計に暑いだろう。それでもボールの中に頑なに入ろうとしない所は、もう風音の個性として割り切るしかない。
「水筒も空っぽになっちゃったね。ヒワダタウンに急ごう。途中に井戸や川があったらいいんだけど……流石に、干上がってるよね」
「その可能性が高いと思います。……でも、この先には≪ヤドンの井戸≫がありますよ」
「≪ヤドンの井戸≫……?」
「はい。別名を≪雨降らしの井戸≫と言って、昔。今回のように日照りが続いた時期にヤドンのあくびで雨が降ったという伝承があるんです」
伝承は伝承と、割り切りたいタイプなのだが……。
それはそうと、光葉の話と今回の件が繋がっているようには思えない。雨が降らないから、今は干上がっているのであって……。
「あくびで雨が降るのであれば、井戸の中にはまだ水があるかもしれません。行ってみましょう」
「なるほど。うん、いい手だ」
水が手に入るかもしれないという可能性を前に、僕らの足は軽くなった。
一筋の希望が潰えたが故に皆で肩を落としたが、悪い知らせではない。
≪ヤドンの井戸≫の傍まで来たということは、ヒワダタウンはもうすぐなのだから。
暑くないのだろうか? と、思ってしまいような長袖長ズボン。
制服を着こんだ警察官がやってきた。覗き込んでいた井戸から離れ、対応をする。
「ヒワダタウンまでの道はわかるか? わからないのであれば、近くまで一緒に行くが……」
警察官の親切心に、光葉はどう対応すればいいのかわからないらしい。
「お気遣いありがとうございます。方向を教えて貰えれば自分たちで行けます」
断ろうとしたが、優しそうな警察官は頑なに頷こうとしない。
埒が明かないと、僕らが折れ、ヒワダタウンまでしっかりと付き添って貰った。
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