Number.006 弱音を吐露した御主人様は、大きな瞳に溢れそうなほどの涙を蓄えて、不思議そうに瞬いた。
『どうしたの? 予想外のことでも起こった?』
アタシの反応が気に入らなかったのかしら。御主人様は不思議そうにアタシを見るの。
「どうして、どうして、キミは……」
嗚咽を吐くように喉を震わせる。懺悔するように、あなたはアタシに云うの。「どうして?」って。
答えなんて求めていない。この
「ボクを赦すの?」
頭がいい御主人様を得られるなんてアタシは幸運な子ね。
どんくさいヒノアラシの主人なんて、目も当てられない悲惨なバトルだったもの。
『お勉強不足ね、御主人様』
アタシにはあなたを振り向かせる手が無いから、別の手を使うわ。
うつむくあの
『アタシはあなたを支えるために、沢山お勉強したのよ』
顔も名前も知らない
赦してあげる、嘘つきで正直なあなたを。
支えてあげる、弱虫で回りの目を気にするあなたを。
「なんで」
何回も言った、なんで? と。
同じことを何回も言う気はないと、チコリータは蔓で起用にボクを持ち上げる。力持ちだ。ボクよりもちっちゃいのに、とっても力持ち。
『ねえ、御主人様。アタシ頑張ったのよ。何か言うことと、それよりも先にやらなきゃいけないことがあるんじゃないかしら』
期待するような視線。気まずくなって逃げるように視線を逸らすけれど、チコリータは許してくれない。
ボクの弱音は許すのに、これは許してくれないのか。……なんでもかんでも許してくれる優しい子じゃないということ。逃げ道を潰されたボクは必死になって考える。いくつか思い浮かんだことは、全部「違う」と、返された。わかりやすく「×」を作ってまで訴えるのだ。
「(落ち着こう。慌てて質問をしたけれど、これまでの質問でいくつか道は潰れた)」
第一に、チコリータが求めているものはボクの弱音ではないということ。
行動やバトルに関する不満かと思ったが、ちょっと迷った末に「×」になった。
関連しているといえばしているのだろうが、ボクからの謝罪は求めていないということ。
「あ、あのね」
もしも、もしかしたら、そうかもしれない。
ちょっぴり疲れたのか、チコリータは枕の上に座ってころんと横になった。
「ボクの名前は光葉」
頭が真っ白になる。全部言えた理由は、ミナトくんのおかげだ。
約束したんだ、彼と。ボクはその約束を最初から最後まで破ってしまったけれど。
「7歳、で、えっと、トレーナーズスクールを卒業した。沢山、お勉強をして皆よりも早くトレーナーになれた」
成りたくなかったけれど。その言葉は飲み込む。
「きみの、トレーナー。えっと、その、よろしく、ね? チコリータ」
にっこりと笑ったチコリータは、戸惑う僕のお腹に突進してくる。
痛くはないけれど、容赦はない。どーんと、膝の上に乗っかったチコリータはそのまま座りボクを見上げる。半分正解したけれど、半分は正解していない。
「(えっと、チコリータが求めてたのは最初の挨拶で……。多分、名前も知っているけどボクの口から言うことを求めた)」
関係を明確にしたいという意思表示。
挨拶は一般的に推奨されるものだ。知っていても、互いの口から言うのではまた違う。
「あ、あと! お疲れ様。あの、すごかった。バトル! 体当たりばっかりだったけど、ちゃんと急所にも当てて……」
ボクの言葉は正解だった。
言い当てた途端に気分よさげに葉っぱを揺らす。ほっと息をついて、ボクはチコリータに触れた。不思議な香りがする。うとうとと、眠くなったボクは寝間着に着替えることなく靴を脱いでベッドに潜り込んだ。外に出しっぱなしのチコリータもどうやら一緒に眠るらしい。まあ、いっかと瞼を落とした。
・ヨシノシティ出身 冬生まれ
・眼鏡をかけたインテリ系の少年だが実際は脳筋。
・最初のポケモンに、ワニノコを選んだ。
・ヨシノシティ出身 春生まれ
・思ったことは何でも言う声のデカい少年。派手な攻撃技が好き。
・最初のポケモンに、ヒノアラシを選んだ。
・コガネシティ出身 春生まれ
・眼鏡をかけた気弱な少年。7歳で〈ポケモン取り扱い免許〉を入手した天才児。
・本当はワニノコが欲しかった。青色が好き。
・光葉がウツギ博士から与えられた最初のポケモンの1匹
・強気な性格で、自分の才能を、判断を疑わない。
・使用する技:体当たり 鳴き声 葉っぱカッター 蔓の鞭