同性である彼に対して適切な表現ではないだろうが、一目惚れだったのだ。
理知的な緑の瞳も、嘘くさい貼りついた笑みも、見慣れぬ褐色の肌も、全てが。
同盟の円卓会議でリーガン公が孫だと紹介した少年が、いたずらっぽく片目を閉じて薄い唇を開く。
クロード、と名乗った。
馬車に揺られながら半ばぼうっとした気持ちで少年の名を反芻する。己には到底持ち得ぬであろう気高さと強い意思を秘めた瞳が忘れられない。
同盟の貴族に名を連ねてはいるものの、先祖の血筋によって与えられた恩恵を享受するだけの私にとって彼のような人間は鮮明すぎた。
今日が初対面の、しかも齢がひとまわりも離れた少年に、それでも敬服の念を抱かずにはおれなかった。
うらやましい。
羨望と嫉妬が綯い交ぜになって視界がぐるぐるして、けれども私は己の身の程を弁え、感情を殺して、いずれ盟主を継ぐ少年に頭を垂れねばなるまい。
うらやましい。
同盟諸侯の誰もがあの少年を素直に受け入れるはずもない。リーガン家の威信が失われつつある今、皆が血眼になって盟主の座を狙っている。
けして一枚岩でない同盟を、武力と知略を以って率い、彼はあの帝国や王国と対等に渡り合わねばならない。
ざまあみろ。敵うものか、潰されてしまえ。
俺にもっと才能があったなら。
武芸、学問、交渉、謀略。
周囲の人間を畏怖させる程の眼光でも、体裁でも、雰囲気でも、異形の紋章でも、何かひとつでも秀でた才があったなら。
三十路を迎えつつある男が、心底くだらぬ迷妄に囚われることもなかっただろうか。
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