「ナマエ、ただいま〜!!!」

「ワン!!」

「あっはは、いい子にしてたかー?」

千切れんばかりに尻尾を振り振り全身全霊で主人の帰還を喜ぶ犬が一匹。
犬小屋にしては豪奢で広々としたその場所は檻で隔てられこそすれ、ひととおりの生活用品が揃えられた一軒の邸宅と化していた。



ジャミル・バイパーのオーバーブロットを皮切りとして起きた一連の騒動を鑑み、学園は如何な理由があれど生徒のひとりに牙を剥いた狼を野放しにはしておけず、本人たっての希望もあってナマエを隔離する方針を取った。

それに対して学園へ巨額の支援金を拠出するアジーム家は、愛息子のため金に物を言わせて学園内に犬小屋を建設することで応じた。


ナマエは熱砂の国に帰るって言ってきかなかったけど…そんなの寂しいだろ!なんてったって、俺がやだ!


カリムのその一言のおかげで、ナマエは窮屈な人間のかたちをとることも、つまらない授業に参加する必要もなくなった。
またあの一件以来ジャミルを露骨に警戒するようになった、わけでもなく、むしろ気遣う一面すら見せるようになった。主人の口から経緯を直接聞かされたことで思うところもあったらしい。


もともとナマエは優しいからな!ちゃんと話せばわかってくれるって、信じてたぜ!


カリムと一緒であれば嫌な顔ひとつせず浴場に向かうナマエを見て、もっと早くこうしておけばよかったとジャミルはひとりごちた。


今では放課後まで飼い主の帰りを待ち、休日には狩りに供することが彼の日課となった。
喉の渇きは癒えぬまま。




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