捨てられていた子犬を見つけた。
誰の目にも留まらない街の片隅でボロ雑巾のように打ち棄てられ、今にも死にそうだった。
可哀想だから拾って帰ることにした。

温かい食事と清潔な環境のおかげで子犬は自力で歩けるほどに回復した。
毛並みを整えてやると夜のように美しい黒毛が風に靡いた。
実のところ狼であると知ったのは、拾って随分経ったあとだった。

こいつの名前を決めてやらないとなあ。何がいいと思う、ジャミル?
うーん、どれも悪くないんだけど、いまいちピンとこないな。
もう直感でいいか!よし、今日からお前はナマエだ!

初めて名前を与えられたとき、俺はもう一度この世に生まれることができたんだ。



爛々と黄金色の瞳を輝かせた狼が、容赦なく男の喉笛を噛み砕いた。途端に鮮血が噴き出し床を深紅に染め上げる。
男は背筋の凍るような悲鳴をあげて事切れた。

…ナマエ………
俺を、助けてくれたんだな。

興奮冷めやらぬまま死体を破壊し続ける狼子を、少年はそっと抱きしめた。

ありがとう。

狼は途端に大人しくなり、気遣うように少年の頬を舐めてやるのだった。




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