初めは幻覚かと思ったんだ。
情けない話だけど、嫌なことがあって。自棄酒ってやつ。はは、どうでもいいかな。
とにかく、アルコールに浸かった脳の神経回路が引き起こした不良に過ぎないと愚行した。

気分が悪くてたまらなくて、取るものもとりあえず俺は路地裏に引っ込んだ。
そこで君と出会ったんだったね。今にして思えば…出会いの場としてはよろしくないな。嘆いても仕方のないことだけれど。

その名に冠されている通り君は女王だ。
本来であれば高潔で気高い尊容を、眼下に侍る民草が知る術は無い。瞳に映すことすら憚られるよ、俺は。
だから、そう、幻かと思った…にわかには信じられなかった。
吐瀉物や排泄物にまみれた汚い路地裏で女が一人爆死したことよりも。
その死体すら残らなかったことよりも、何よりも、君が。
こんなにも美しい存在が俺の目の前に居ることが、どうしても信じられなかったんだ。

ああそう、そう言えば…あのとき俺は貧相な語彙力で君への美辞麗句を並べ立てたね。どれだけ言葉で飾ろうが君の放つ高貴さの足元にも及ばないのに。
君は表情こそ変えなかったが、さぞ聞くに堪えなかったろう。謝らせてくれ。申し訳なかった。

…けれどもやっぱり、言わせてくれるかな。君を前にして言わずにはいられない。この衝動を抑えることができそうにない。

君はほんとうに美しいよ、キラークイーン。




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