やがて白鳥座のデネブの方角へ消える
その小さな街は時間をかけて死んでいった。
ゆっくりと、しかし着実に、まるで見えない捕食者に食い潰されるように衰弱して。
大地も水も、空気も動植物も、人間の精神でさえ汚染され尽くして。
狂い果てるように死んでいった。
避けられぬ命の危険を犯してまで、その杳として知れない得体を解明しようとする者はおらず。
やがて街は人々の記憶からも失われてゆく。
…たくさんたべて、おおきくなったね。
ただひとり取り残された少年は、朽ちた灰色の廃墟でそうひとりごちた。
ひとはこいつをその目に映してやると、まるでオーロラのようだね、とても美しいね、と言う。
到底そんないいモンじゃねえんだけど、とにかくみんながみんなそう言う。
そうして取り憑かれたようになって、頭がおかしくなって、死ぬ。
こいつが欲しいものは日によってまちまちだ。気分屋というかマイペースというか、少しばかり手のかかることも、あるにはあるが。
肉が食いたい、精神を貪りたい、生気を吸いたい、あれが好きこれは嫌い、腹が減った、腹が腹が腹が腹が腹が。
機嫌がいいときや気に入らないことがあると仄かに明滅して教えてくれるから、わかりやすいのである。
青色になったり赤色になったり黄色になったり緑になったり。見えなくなったと思ったら視界が虹色に染まったり。途端に真っ暗になったり。
そんなふうにいたずら好きで、昔飼っていた小鳥をつい死なせてしまった時には喧嘩もしたけれど。
こいつだけが、俺にとってたったひとりの大切な友達。
子供の頃からずっと一緒で、それでもどういった存在であるのか図りかねていたこいつの名前を、とある本を読んで初めて知った。
宇宙からの色。
と、呼ぶらしい。
← →
戻る
トップ