涼やかな秋風が吹くようになった今日この頃。
俺は懐かしの学び舎、もといホグワーツ魔法魔術学校へ舞い戻ってきた。
また談話室近くの厨房でしもべ妖精に食い物を強請る日々が始まる。母ちゃんのクソ不味い飯とはおさらばだ。やったぜ。
歳若く安逸を貪っていた俺は呑気な期待に胸躍らせ、ホグワーツ特急に乗り込む。
この日この時から、記憶を呼び戻そう。
水盆に一筋のか細い光が吸い込まれてゆく。
出来うる限り仔細に記さねばならない。
あの男が一体何者であったのか、胸中に何を抱えていたのか、近い将来どれほどの惨事をもたらすのか。
当時の誰にも計り得なかったのだから。
空腹に耐えつつ来たるご馳走に思いを巡らせ、それでも長ったらしい組み分け儀式をなんとか耐え抜き、眼前に現れた肉の塊に嬉々としてフォークをぶっ刺した瞬間、大広間の扉が控えめに開かれた。
俺の腹が不機嫌そうにぐううと唸り、隣の友人に肘で小突かれる。あいつだ、と誰かが囁いた。
やがて校長とともに現れたブロンド頭の青年がおっかなびっくり周囲を見渡す様子は、さながら魔法界に初めて触れたマグルの一年生のようだった。
好奇の視線を浴びながら、俺と同学年に転入してきたという彼はグリフィンドールに配属され、それを見届けてから俺はやっと肉にかぶりつけたのである。
知る由もなかった。
この誠実そうな好青年が、瞬く間に許されざる呪文を会得し、闇の魔術に傾倒してゆくなど。
後の世において、彼の辿った足跡を追い、道を違う者が現れないように。
ただそれだけを願う。
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