おったまげー。
瞬間静まり返った防衛術の教室で、間抜けにも放った俺の一言はへキャット先生のひと睨みによって虚空に消えていった。
転入生が、あのサロウをいとも容易く打ち負かした。
つい先ほど教わったばかりの最低限の防衛呪文で、魔法使い同士の決闘なんてろくに体験したこともないであろう彼が、だ。
決闘前に余裕をかましていたサロウが手心を加えたとも考えにくい、あいつはそんな殊勝な真似はしない。
照れくさそうに運が良かっただけだよとはにかむ様子は、ほんの少しだけ、嘘くさく映った。
グリフィンドール生特有の傲慢さをおくびにも出さぬが、かと言って有無を言わせないただならぬ雰囲気を纏っている。
それが、あの男を間近で見て抱いた感想。
後にこの直感は正しく、彼は騎士道精神なぞ露ほども持ち合わせていないことを思い知るのだが、未だ正体を知らぬ俺は微かな違和感を飲み込んで、教室をあとにしたのであった。
決闘から数日後。
転入生とサロウはすっかり打ち解けたようだった。
グリフィンドール生とスリザリン生の組み合わせってのは、どこで何をしていたって目立つ。
もともと創始者同士の仲も最低最悪であるし、声高に謳われる系統や素質を色濃く継ぐ連中ばかり組み分けられるので、当然生徒同士も剣呑だ。
だからこそ、彼らの親密ぶりは他寮の生徒の目にもよくついた。
つい先日には一緒にホグズミードへ赴き、転入生の買い出しに付き合うどころかトロールを討伐したらしい。(はあ!?)
一瞬耳を疑うが、ホグワーツへの道中でドラゴンに襲われ生き延びた (尾ひれがついた話なのかは知らないが)なんて噂が転校初日で飛び交っていた時点で、只者じゃあないんだろう。
親しげに話すふたりを横目で見送っていると、転入生とちらりと目が合った。
金の色素の薄い彼の瞳が、まるで蛇の眼のように錯覚してぎょっとする。
びくりと身を震わせた俺のことなんか歯牙にも掛けずに通り過ぎていく。
誰かをそら恐ろしいと感じたのは、初めてだった。
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