サロウがまたしても禁書の棚に忍び込んだ、とピーブスが吹聴してまわっている。
もはや恒例行事となりつつあるニュースだ。禁書の棚の何がそんなに彼を惹きつけるのか。
サロウとは授業が被った際に二言三言交わす程度の仲で、お互い名前くらいは知っているけれど、ゴーントほど親しくはない。
だから知りようがないし、どうでもよかった。
ほとんどの生徒がまたかよと興味なさげに聞き流す中で、ピーブスの甲高い喚き声だけが虚しく響いていた。


俺は薬草学の授業が好きだった。というより、ハッフルパフ生ならみんな好きだろう。
なんせ薬草学を教えるガーリック先生はハッフルパフ出身だ。
優しく公平で、魔法植物と生徒たちに対していつも真摯だった。
そんな先生が、転入生に個人的に課題を出して面倒を見てやっていると聞いた時、俺はお節介ながらも心配になった。

ガーリック先生に限らず、途中入学であるがゆえに転入生は他の主要科目を受け持つ教授からもいくつかの追加課題を課されていると聞く。
呪文学や変身術、防衛術といった主だった教授陣からの評価は悪くないどころか、呼び寄せ試合でオナイを負かしたことからローネン先生が彼をいたく褒めちぎっていたのを覚えている。
もともと彼に基礎呪文を教え込んでいたフィグ先生は言うまでもない。

一様に大人たちが転入生に目をかけ、また彼自身も魔法の才能を開花させていくさまに、俺はレイエスのような子どもじみた競争心よりも不安や疑念の方を強く感じていた。
何か…うまく言語化できないが、何かを隠しているのではないか。
いきなり魔法界にぶち込まれて、一月と経たずに苦もなく順応していくのは、編入前に基礎を学んでいたというだけでは説明がつかないのではないか。

紅茶を傾け楽しげにガーリック先生は転入生とおしゃべりしている。盗み聞くつもりはないのに、俺の耳は勝手にふたりの会話を拾おうとしてしまう。
薬草学の教授が先生でよかった、と。
年若い女性であれば誰もがときめくだろう完璧な微笑とともに、そんなことを言ってのけるのだから大したものだ。
案の定先生は嬉しそうにお礼を述べ、その声がほんの少し上ずっていたのは言うまでもない。


確かに彼は美しかった。
まばゆく輝くブロンドの髪、黄金色の神秘的な瞳。
足を組み本の頁をめくる、たったそれだけの所作が絵になるような男だった。
そんな麗しい外見とは裏腹に、あれほどまでの悍ましい憎悪を抱いていただなんて、誰が知り得ただろう?



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