スワンプマン。和訳すると沼男。
とある湿地帯に赴いた男が落雷により絶命、消滅する。
時を同じくして、化学作用の迸った沼から一見すると大層似通うもうひとりの男が形成される。
新しいほうの男は身体のあらゆる器官、組織を原子レベルに至るまで、消滅した男と同じ細胞と情報で構築されている。
容貌や背格好のみならず、嗜好、性格、記憶、知識。全てがまったく同一である。
このとき新しくうみだされた男は、消えてしまった男と同一人物であるといえるか。
-すこし、私と簡単な思考実験を試してみませんか。
君のような若人と談議する機会になかなか恵まれなくてね。
よろしければ、意見を聞かせていただきたい。
そう嗤って目の前の人は琥珀色の液体を喉奥に流し込む。
しんしんと雪の降る夜、野郎のひとり酒を哀れんだのか知らないが、妙に生白い男に声をかけられたのだ。
その耳障りの良い低音がなにか無感情で氷のように聞こえたから、興味本位で話に乗ってみただけで。
俺は露わになった彼の艶かしい喉仏を横目に既にアルコールに酔った脳味噌で、これからひどく小難しい理屈をこねくり回さなければならないことに軽く目眩を覚えたのだった。
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