続き書きたいな〜(無能)
「お前ってさ、承太郎のこと苦手だよなぁ」
何の気なしにその言葉を放った時、なまえはあからさまに答えに窮した。
間の悪いことに室内に承太郎本人がいる状況でだ。
俺はそんなわけないだろとすぐに返ってくるものだとばかり思っていたから、ほんの軽い冗談のつもりだったから、ばつが悪くなって下を向く。
承太郎は便所に立っていたため事実聞こえていたか定かではないが、目の前の男が眉根を寄せたところを見て隠す気なんかはなから無かったのだと理解した。
「別に嫌いじゃねーよ」
「…おお、そんならいいや…」
好きでもないけど、と続けそうな奴を遮って声をあげた。やがて戻ってきた承太郎に対し、たった今交わされた会話なんて無かったかのように努めて明るく振る舞う。
そんな俺を眺めるなまえの、さして変化のない表情からは何を考えているのか窺い知れない。これだから日本人ってのは、もっと表情筋を鍛えろっての。
基本的には、なまえという男はいい奴だ。
飄々として笑みを絶やさず、花京院のようにこ生意気でなければアヴドゥルのように口うるさくもない。ジョースターさんにだって頼りにされている節がある。
常に輪の中心にいるというよりは一歩身を引いて俯瞰的な立場で関わろうとする人間なのだろう、彼に冷静に諭されると妙に納得できてしまうのだから不思議だ。
そういった立ち居振る舞いに加えて取るに足りない軽口も叩けるような、男。
ある日、なまえが承太郎にだけたまに煩わしそうな表情を見せることに気がついた。
きっかけがなんだったのかもう覚えていないけれど、いちど気づいてしまえば気になって気になって、そういえば承太郎と二人で行動したがらないなとか目を見て話そうとしないなとか、なんか知らんがよそよそしいなとか。
意識すればなまえのそういう様子をいくつも見かけるようになった。
だから、どうせ俺の杞憂に過ぎないことを確認したい意味もあったのだ。
今晩の部屋割りが伝えられたときの様子からして、そこはかとなく承太郎との相部屋が嫌なのだろうなと想像はついていた。
気を利かせて顔を覗かせたつもりが、結果としてむしろ明確な根拠を裏付けてしまったわけだが。
…ああ、馬鹿なこと言うんじゃなかった。
「…じゃ、そろそろ俺部屋戻るわ」
「あ?もう帰んの?」
心なしか不服そうななまえとなにか言いたげな承太郎を残して、俺は気まずい空気の漂う部屋を後にした。
気の置けない仲間だと思っていた男の思いもよらない一面に、小さなわだかまりを抱えたまま。
×
「自由行動っていわれてもなあ…」
旅の途中、交通手段の調達や天候の影響で数日ほど滞在することが時折ある。
今日もそんなうちの一日で、特段の予定も観光する気分にもなれない僕は暇を持て余していた。
夕飯の時刻まで時間を潰さなければならないというのに、買い出しはジョースターさん達に任せてしまったし、手持ちの小説はとっくに読み終えてしまったし。
いっそ別室の承太郎を誘って、その辺をぶらぶら出歩いてみるのも悪くない…
そんなことをぼんやり考えていると、開け放していた窓から煙草の香りがふわりと漂ってきた。
大方ベランダで承太郎かポルナレフあたりが喫煙しているのだろう。ああ確か、隣は…
「しつけーよ。どこもおかしくないっつってんだろうが」
「だが…」
「あーうっさい」
「おい、どこに行く」
「俺の勝手だろ」
突然承太郎となまえさんの剣呑な会話が耳に入ってきた。ふたりに一声かけようと開いた口を咄嗟につぐむ。
「待て。俺も…」
「着いてくるなよ」
固まる僕をよそにふたりはベランダを放れたようだった。何か言い返したらしい承太郎の声も、やがて遠ざかり聞こえなくなる。
いまのは一体…
この強烈な違和感はなんだろう。
僕の記憶の中のなまえさんは、あんなふうに承太郎に対して邪険に接するひとだったか。
ポルナレフとつるんで軽口こそ叩くが、あんなにぶっきらぼうに、突き放すような物言いをするひとだっただろうか。
ずっと以前から承太郎にあんな態度を取って、
それを気取られないように上手く隠しおおせていたのか。
…何も知らなかったのは僕だけなのか。
たった今聞き齧ったなまえさんの声色や言葉遣いのせいで、これまで抱いていた彼のイメージと大きく乖離してゆく。
考えても考えても思考はまとまらないばかりか、次々と新しい疑問がわいてくる。
あれは声のよく似た別人だと思った方がいくらか腑に落ちるくらいだ。
兎にも角にも、友人があのような扱いを受けているというのに見て見ぬふりなどできるわけがない。
僕は部屋を出て行ったであろうなまえさんのあとを追うことにした。
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