ぼんやりと薄れゆく意識の中で、やけに硬く冷たい手が触れた。

「下半身喪失の重篤な肉体損傷、出血多量、微弱脈拍」

無機質で無感情な、肉声というよりも合成された音声。
私を看取る者は人間ではない何かであるということがなんとなくわかった。それでも。

「し、にたく…ない」
「不明な言語です。解析開始、完了まで約15秒お待ち下さい」
「……しにたくない」
「解析中です。完了まで約8秒お待ち下さい」
「しに…たく…な」
「解析完了。心肺停止を確認。蘇生不可能」
「…………」
「………」
「……」
「…」


エルヴィンはその日、激化した戦闘の渦中にいた。奇行種との遭遇を皮切りに引き寄せられるように現れる巨人たち。索敵が機能していないことは明らかだった。
一人、また一人と食われ死んでいく中で、奇妙な光景を見た。
死んだ兵士のかたわらで、一人の人間が膝を折ってじっとしている。調査兵団の制服は着ていない。立体起動装置も見当たらない。
そして何より、巨人が全く彼を捕食しようとしない。まるで視界にすら入っていないかのように、彼へ手を伸ばすことは終ぞなかった。
やがて立ち上がり、巨人の足に踏み潰されることもなく器用に戦闘の合間を縫って行く彼の背中を追いかけた。

「オイエルヴィン、どこへ行く!」
「君!」

振り向いたのは無感情な瞳が鈍く光る男だった。顔のパーツは整然としているのにどこか人間離れして、あたかも精巧な作り物のようなこれは…

「人形…?」

「私は壁内人類の情報収集と解析を目的とした???プロトタイプです。今回の巨人との接触における生存確率は約9パーセントです。生体反応の急激な減少が見られます、早急な対策が必要です」




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