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待って
「っ………」
思わず、背を向けた彼のコートを掴んでしまった
一瞬見えた、私と違う西洋人の髪色
その人は私より長くて
それだけでも綺麗だと思ってしまった
「…………?」
仕事があって忙しいのにも関わらず
もう一度私の方を向き屈んでくれて、その優しさにまた胸が高まってしまう自分はなんて単純なのだろうか
「あっあの…………」
ハワード様は
私なんかでは到底お目見えできないのに、
中央庁の監査官と言う立場の立派なお方の人に対して私は
どうやってお礼をしたら良いのか分からなくなっていた
今は監査官様のお仕事を優先させるべき、と考えも浮かんだが
この機会を逃してしまったらもう二度と会えないかもしれない
かもしれない
嗚呼、
試行錯誤
頭がくらくらしそう
そして思い出した
初めて彼を見たときの胸の高鳴り、目線を交わした瞬間に早くなる鼓動
だんだん熱くなる顔を見られるのが嫌でフードを深く被ってしまったあの時
この人ともう少しだけお話してみたいだなんて
私は一体どうしてしまったのか
「……………?」
「……………、!」
嗚呼、困った
(私は、)
こんな気持ちになるなんて
(私は、)
また、この人に会いたいだなんて
思ってはいけないのに
(そうだ、)
手元に握っていた花を何本か選びもうひとつの束を作れば
私の髪を結っていたリボンで纏める
花束でしか、今はお礼ができないけれど
どうか
また彼に、会えますように
そう願いを込めて
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「よ!ほくろふたつ〜
こんな遅くまでスイーツ本を……
って、ん?なんさそれ?顔に似合わず花束なんて」
「ブックマンJr.
その呼び方いい加減遠慮願いたいのですが」
「ユリと淡い桃色のカスミソウ…………
おぉ………!お主も"コレ"か?」
「何を言いたいのですか?ブックマン………私をからかって愉快ですか?
まったく、私は仕事中ですよ!本を読まないなら書庫から退出しなさい!!!」
「「「「「……………」」」」」
……しまった、私としたことが書庫で声を大にするなんて
わざとらしく咳払いすれば
「ちぇー」とか「ツマンないのぅ」などと好き勝手言って別のブースへ移るブックマンとJr.
「(……やっと静かに見れる)」
《世界のスイーツ集》
《育ち盛りにぴったり〜大盛りメニュー編〜》
《世界の花》
決して気になったとかそういう事ではない
自分の教養の為
教養の為なのだ
「…………………」
『…っありがとうございました! 』
…………………#本田セイ#、
「…………………、」
らしくない
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