最近、ユラは妙な夢をよく見るようになった。夜眠ると、ユラはふと目が覚めてむくりと起き上がる。けれど、ベッドを見るとそこにはユラが眠っている。自分の寝顔も、最初は少し笑えた。けれど、何度もそういった夢をみるうちに一度もベッドで眠る自分が動くことはなかったために、なんだか不気味だった。まるで、自分の死体を見下ろしているかのようだった。
夢とは言え、ぴくりともしない自分を見ているのは気持ちが悪かった。そのため、あるとき部屋を出てみることにした。
自分の家だ。両親の部屋を覗こうかとも思ったが、やめた。目の前に真っ赤な扉が現れたからだ。ユラは、その扉を前に見たことがあるような気がした。どこでいつ見たのかは思い出せないが。
扉を開けると、そこには真っ赤な……悪魔が立っていた。足には蹄、鋭い爪に恐ろしい顔……。
「私……」
悪魔がゆっくりとユラに近づいてくる。
「あなたのことを知ってるわ。でも、あなたは……誰なの?」
恐ろしい悪魔のはずだ。それなのに、ちっとも怖くないのはなぜなのか。
悪魔はそっとユラを抱きしめた。ずっと、こうして欲しかったような……そんな気がした。
次の日、目覚めてテーブルに着き、朝食のトーストを頬張ろうとしたとき、母がユラに話しかけてきた。
「昨夜……遅くに廊下を歩いていた?」
「歩いてないわ。何言ってるの。あ……変な夢は見たわ」
「変な夢?」
母親の表情が曇った。
「そう。夢の中で私は家の中を歩いていたの。それで、私は赤い扉があって」
「中には悪魔がいたのね。……ああ、どうしよう!」
「そうだけど……何で知ってるの?」
母親は突然立ち上がり、うろうろと歩き始めた。
「あなたは……あなたは前にもその悪魔に会ってるの。でも、その悪魔はすごく危険なのよ! だから、前にはその悪魔に会う方法を暗示で忘れさせてもらったのよ」
「本当に危険なのかな。だって私、ちっとも悪魔のことが怖くなかった」
「前もあなたはそう言ってたわ。それに、それに……」
母親は頭を抱えながら、かすれた声で「あの悪魔を愛してるんだって言い始めたのよ……」と言った。
ユラは、その言葉を聞いたときすべてを思い出した。そして、悪魔と愛し合っていたことを思い出したのだった。
「もう誰にも邪魔させない。お母さんにもね。私たちは愛し合っているんだから」
もう二度と彼のことを忘れたくない……ユラはそう思った。