可愛い妹

 モール家にエスターという少女が養子としてやってきたのはつい先週のことだ。ユラは妹をたっぷり可愛がってやって、いろんなことを教えてやるつもりだった。だが……。
「どう? 上手でしょう、私。教えてあげてもいいわよ」
「エスター……」
 先週までユラはエスターにピアノをおしえていた。エスターはちっともピアノが弾けなかったはずだ。それがどうだろう、今彼女はユラよりもずっと上手にピアノを奏でてみせた。
「じゃあ、エスター先週のは……」
「あんたが得意になって教えてあげるとかいうから、付き合ってあげてただけ」
 そう言ってエスターは意地悪そうな表情を見せた。
「すごいわ、エスター。それにあなたってすごく優しいのね」
「はぁ?」
「だって、ピアノが弾けないふりをわざわざしてくれたんでしょう? 私のために。ありがとう、エスター。でもいいのよ。できることはできるって今度からは言ってね」
「……」
「ねえ、エスター。私にピアノ教えてよ。あなたすごく上手だもの!」
 エスターはため息を吐いて、「莫迦じゃないの」とユラには聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「え? エスターなんて言ったの?」
「……。別にいいわよって言ったのよ」