「名前様、ヴォルデモート卿がお呼びでございます。」
使用人が名前の部屋のドアを叩き、そう告げた。
「分かったわ。行くわ。」
ホグワーツの事だろうか。名前は飲んでいた紅茶を置き、シルクのようなプラチナブロンドの髪を後ろに払い、ヴォルデモートの部屋へと向かった。
いつもと変わらず、薄暗い部屋の主人はまたまた偉そうに、イスに踏ん反り返るように座っていた。
「トム、その座り方どうにかならないの。」
呆れたように名前は目を仰ぎ、そばにあるアンティーク調のフカフカなソファーに腰を掛ける。
「…。お前の編入する日にちが決まった。」
少し不満そうな目でこちらを見ながらヴォルデモートは座り直し、名前にそう告げた。
「それは嬉しい。早く行きたいわ。ところでいつになったの?」
「明日の8時に出発だ。」
「嘘でしょう!?明日なんて。準備も何もして無いから無理よ。」
良いのか悪いのか、ヴォルデモートの仕事は早く、もうホグワーツは名前を編入生として受け入れる準備が出来ているようだ。
「心配する事はない。俺様が直々に準備してやった。」
そう言い、ヴォルデモートが杖を振ると名前の前にあるテーブルの上には所狭しと、ローブにマント、分厚い教科書や大鍋などホグワーツで必要な物が全て揃えられていた。
「ありがとうトム。これで何とかホグワーツに通えそうね。」
「「失礼致します、我が君。」」
ヴォルデモートは、一つ一つ嬉しそうに眺めるそんな名前が、心の中でかわいいと思っていた所、2人の男が部屋に入ってきた。
「ルシウスにセブルス。よく来てくれた。」
2人は頭をヴォルデモートの前で膝を曲げ、挨拶をする。
「2人は幸い、ホグワーツの生徒だ。お前の護衛役となってもらう。私が直接行ってやっても良いが、あの憎たらしい老いぼれ狸には会いたくないのでな。」
老いぼれ狸とはダンブルドア校長の事だろう。ヴォルデモートはムッとした表情で言った。
「大丈夫よ。心配なんか要らないわ。」
「何があるか分からない。お前が目の届かない所で何をされるのか心配だ。」
真剣な顔をして話をするヴォルデモートは余程名前の事が心配なんだろう。
「ただ、2人の目も届かない時があるだろう。だからこれを常に着けておけ。お守り代わりだ。」
そう言って渡されたのは、血のように紅いルビーのネックレス。
「肌身離さず付けとくのだ。いいな?」
「こんなに綺麗なもの…まるで貴方の瞳のようね。ありがとうトム。」
顔を綻ばせ、喜ぶ名前をヴォルデモートは思わず抱きしめた。
「お前が心配で堪らない…手放したくなどないのだ…」
まるで壊れる様なものを扱う様に優しく名前の撫でるヴォルデモートからは、どこからも闇の帝王とは思えない。
「名前に何かあったら、お前達。どうなるか分かっているのだな?」
名前とヴォルデモートがラブラブしている中、居心地が悪そうにしていた、いや、嫉妬で震えていたルシウスとセブルスは急にヴォルデモートに話を振られ、2人は低いトーンで返事をするしかなかった。
(あのラブラブさ、絶対見せつけられているな)
2人は同じ事を思った。
「ほぉ…お前達、この俺様に楯突く気か。」
簡単に心を読まれ、ヴォルデモートは挑発的に話しかける。
急いで命乞いをしようと慌てふためいた所、名前は話を変えた。
「ところで2人は何年生なの?」
ルシウスとセブルスは名前が話を変えてくれたお陰で、ホッと息をなで下ろす。
「私は7年生、セブルスは一つ下の6年生だ。」
「名前は何年生に編入するんだ?」
セブルスが質問すると名前はそれを忘れてたと言わんばかりに、「どうしよう。それを決めていなかったわ。」と焦り出した。
「6年生として書類には書いておいた。なんせセブルスがいるしな。ルシウスと同じ7年生だと、卒業まであまりにも早すぎると思ってな。」
「そうなの!多分、いや私は絶対スリザリンに入るだろうから2人とも宜しくお願いするわ。ルシウスとセブルスが居てくれたら私も安心だわ。ただ、食事にトマトとバナナが出てこないかどうかそこだけが心配よ...」
「まかしなさい。名前の食事の所だけ入れるなと指示しとこう。」
さすがルシウス。地位が地位なだけ、色々手を回してくれる。
「名前…出発は明日だ。今日はゆっくり過ごすといい。ルシウス、セブルス。下がっていいぞ。」
ルシウスとセブルスはヴォルデモートに挨拶をし、名前に若干目を合わせてからその場を去った。
セブルスは耳元で「またホグワーツで」と囁き、ルシウスに関してはウィンクをキメていた。
「あいつらが一番危ないのかもな…」
ヴォルデモートは一番の原因を見つけたのかもしれない。
明日から、名前のホグワーツでの生活は始まる。