二度目のため息から続く沈黙に耐えられず恐る恐る顔を上げると困ったように嵐が笑った。

「元気よ。相変わらずな王様に振り回されてはいるけどね」
「あはは、目に浮かぶ」
「そんなことよりなんで連絡取ってないのよ」

先ほどよりは小さい声で、でも少し興奮気味に問い詰めてくる嵐にスマホの画面を見せる。

『今日は呼んでくださりありがとうございました。とても楽しかったです!帰りも送ってもらってすみません…』
『王様とかさくんが材料買いすぎちゃって困ってたから来てくれて助かったし大丈夫。明日も仕事なんでしょ?早く寝なよ。』
『すごく美味しかったです!瀬名さんは久々のお休みですよね。ゆっくり休んでください。おやすみなさい!』
『人間とは思えない数食べてたしね。みょうじに言われなくてもちゃんと休むから。
おやすみ。』

「なにこれ、泉ちゃんとのやり取りじゃない…確かこの前のタコパの日ね。これで終わりなの?」

スマホから私へと視線を戻した嵐の眉間にはしわが寄っている。

「そんな怖い顔してるとそういう顔になっちゃう、よ?」
少し前に言われたことをそのまま返すと「余計なお世話よ!」なんて返された。

「連絡取ってないなんて言うから、私てっきり泉ちゃんが冷たいこと言ってなまえちゃんを傷付けたのかと思っちゃったじゃない!」
「まっ、またって、そんなことないよ!?瀬名さんはいつも優しくて素敵だよ!?」
「そうねそうね〜」
「思ってないでしょ!」

「それで、どうしてお返事してあげないの?」と優しく聞いてくる嵐の手元からスマホを受け取り操作をする。そして一枚の写真を表示したところで私の指は止まった。

「見て」
「ん〜?あら。これ、なまえちゃんが帰った後の写真じゃない!こんなの撮ってたのね!」
「そう。司くんが送ってくれたんだけど。それで…」
「それで?」

ピンときてない様子の嵐に痺れを切らし「ここ」と画像を拡大して見せる。

「泉ちゃんがどうしたのよ…あ、格好良いとかっていう惚気はいらないわよ」
「確かに瀬名さんは格好良いけど、そこじゃなくて!」
「もう、じゃあなに?」
「これ。この服。これね、学生の頃に瀬名さんにお土産で買ってきたTシャツだったんだけど、渡したときは『こんなダサいのパジャマでも着ない』って言ってたの!なのに!着てくれてるの!!!」
「…………」
「私が帰ってから着てるなんて……!」
「わかった。わかったから落ち着いて」

半身になってテーブルに乗り出す私を今度は嵐が宥める番だった。

「最初はいつもみたいにお返事返そうと思ってたんだけど、瀬名さんのこういうところズルいなって、好きだなって思ってたら勝手に恥ずかしくなっちゃって……何て返せばいいかわからなくなっちゃった」
そう言ってへらりと笑えば本日何度目かのため息が聞こえる。

「はいはい、ご馳走様。私が見ててあげるから早く連絡してあげなさいよ」
「うん!ありがとう」

Back