にこにこと上機嫌でスマホの画面を操作する友人を見て口から溢れかけたため息を飲み込んだ。
ため息を吐くと幸せが逃げちゃうって言うしね。なんて考えながら小さく震えた自分のスマホに視線を落とす。
『そう。』と素っ気ない返答が表示されたと思えばすぐにまたスマホが震え『よかった』と表示が続く。
*
「ねぇ、なるくん。最近みょうじと連絡取ってる?」
撮影の合間の休憩中に小さく落とされた言葉に反射的に顔を上げる。
声の主である泉ちゃんは表情ひとつ変えずにスケジュール帳とスマホを交互に睨んでいた。
時折、「こんな時間で移動できるわけないでしょ」などと溢しているところをみるといつもの如く私たちのスケジュールを詰めてくれているのだろう。
リーダーが少し……というか、かなり変わっている私たちのユニットでは彼がその代わりに細かい部分を調整してくれていた。
よく文句は言っているけれど何だかんだしっかりこなすところはさすがだと思う。
「聞こえてる?」
なかなか返事をしない私を不思議に思ったのか少し眉間にしわを寄せながら視線だけを寄越してくる。
慌てて「ちょうど今週末にご飯に行く約束してるわよ」と伝えれば「ふぅん」と素っ気ない言葉が返ってきた。
「気になるの?」
「別に」
「じゃあ写真送るわね」
「…………」
私たちの噛み合わない会話はいつものことで、返事はくれないけど「いらない」とも言わない泉ちゃんがなんだか可愛くてクスクスと笑っていると集中出来ないと怒られてしまう。
チラッと盗み見た素直じゃない素直な先輩はスケジュール帳とのにらめっこを再開していた。
*
「嵐、ニヤニヤしてどうしたの?」
数日前のやり取りを思い返していると名前を呼ばれて我にかえる。
「いつも助けてもらってる人にささやかなプレゼントをしてみたの」
「え!?なにそれ、誰に…?」
「ん〜ひみつ」
またしても震えたスマホの画面には『ちゃんと家まで送りなよ』と表示されていた。
小さく笑って『もちろん!』と返すためにメッセージ欄を開くと、先ほど私が送った『なまえちゃん今日も可愛いわね』の一言と一緒にこっそり撮ったパスタを美味しそうに頬張るなまえの写真が目にとまる。
普段より少し早めの返信は喜んでくれてるのかしら。
なんて思いながら窓の外を見れば時間も遅いせいか大通りも人がだいぶ少なくなっていた。
「さて、と。そろそろ帰りましょうか」
「そうだね。あ!瀬名さんからお返事きた」
「あら、良かったじゃない」
「今日はお返事が早い……これで明日の仕事も頑張れる」
嬉しそうにスマホをぎゅっと握る彼女をみてると私も嬉しくなる。
「…嵐またニヤニヤしてる」
「いいの、いいの。気にしないで」
「ほら、行くわよ」と伝票を手に立ち上がれば「私も払う」と追いかけてくる。
本当は私が払ってしまいたいところだけれど『女子会は割り勘』これは私たちが学生の頃からの約束だからこっそり大切にしているのだ。
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