こんなはずではなかった
それは、あまりにも唐突な出来事だった。
私は、呆気なく死んだのだ。

しかもびっくりするくらい単純な事故死。
呆れのため息すら出ないほど、よくある夢小説の前置きのようだ。

「……。」

しかし、何の因果か…
私は二度目の生を受けることとなった。

神様からの説明とかは特にない。
いや、正直言って大変困るのだが、いくら神に祈りを捧げたところで、返事は返って来なかった。

この意味不明な現実を受け入れるしか選択肢のない私。
しばらく過ごしていて、分かったことといえば…

それは、ここが『名探偵コナン』という作品の世界であるのだということ。

は?とツッコまれても仕方ない程理解に苦しむ展開だが、私にも何が何だかよく分からない。
どんな存在が何のために私をこんな受け入れ難い現実に放り出したのか…
まぁ、当然考えても閃くはずはないのだが。

ちなみに、何でここがそんな摩訶不思議アドベンチャー世界だと気づいたのかっていうと、テレビのニュースで『米花町』という名前がふっつーーに出てきたからだ。
都内でそんな地名が存在するのは、コナンの世界くらいなもの。

とは言っても、私はコナンの漫画を全部見たことがあるわけではない。
所々抜けているところもあるし、記憶にない事件も多いのである。
なので正直、知識あり転生!!と銘打たれても、苦笑いするしかない。
こんなことならちゃんと読んどくんだった。いろいろ。

え?ていうか、下手にメインキャラクターと接触したら私、また死ぬんじゃね?
それは嫌だ。今度こそ私はそれなりに長生きしたい。せめて60まで生きたい。

今生の生活は常にいろんなことを想定して行動しなければいけないな…
面倒くさ。

とにかく私は、ちょっと前世の記憶を持ってるただの一般人として、この世界で生きていくことを強いられることになったのだった。
1/22
prev  next