女は愛嬌
(現在の)私の母は、海外でも有名なファッションブランドのデザイナー。
そして、(現在の)私の父は大手企業の社長だ。
正直言って、普通の会社勤めだった前世の両親のことを思えば、今の両親は私に不釣り合いもいいところだった。
私自身だって、前世で成人していたが、普通のサービス業に勤めていたし…

とにかく、そんなレベルが無駄に高い両親から目一杯の愛情を受けながら、私は複雑な思いで成長していく。
そして、ついにその時は訪れた。

小学校の入学式である。

「とりあえず、まずは小学校から…」

頑張らねば…と私は半ば嫌気が差しつつも、気を引き締める。
目立ちすぎず、かといって違和感なく在らなければならない。

「はじめまして、立川ララっていいます。よろしくおねがいします。」

たどたどしくそう言ってはニコッと笑う。これで私も立派な小学一年生の仲間入りができた…はずだ。
自分でやってて、あまりの似合わなさに寒気がするが、クールぶっててもいいことは何もない。
女は愛嬌と言うしな。

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