許せないことくらいある
「立川さん。あなたをここに閉じ込めた犯人に、心当たりはありませんか?」
零くんのおかげで落ち着いてきた頃、担任の先生(ちなみに、住友先生という)にそう問われた。
私はしばらく黙り込むと、口を開く。
「声を聞く限りでは、女子生徒だったと思います。小田克己くんの幼なじみだと言っていました。」
「あいつか…!!」
零くんはそれが誰なのか瞬時に理解したのか、今にも殴り込みに行きそうな勢いで立ち上がった。しかし、「まぁまぁ。とりあえず落ち着いて…。」と諸伏くんに宥められ、もう一度腰を下ろす。
「小田くんの幼なじみの女子生徒ってことは、笹原さんかな。」
んー…と諸伏くんが続けて声を発する。
笹原さん…?同じクラスに居たっけ?
「笹原さんというと、C組の生徒ですね?」
住友先生の言葉に私は納得したように頷いた。私たちはA組なので、違うクラスのようだ。そりゃ知らんわ。
「その笹原は、俺にも嫌がらせしてきたんだ。」
「え?零くんにも…?」
零くんは苦々しい表情で、受けた嫌がらせの数々を上げる。
下駄箱に虫を入れられたり、廊下に張り出されているクラス毎の集合写真の零くんの部分が傷つけられてたり、筆箱を隠されたり…
小田くんといい、何とも幼稚な嫌がらせだが、精神的にはやはりクるものがありそうだ。
ちなみに、目撃証言があったことから、それらをやったのが笹原さんだってことは確定らしい。お間抜けさんか。
「零くんにもそんなことを…許せない…。」
私がボソッとそう呟くと、零くんは私の手をギュッと握ってきた。
「俺は気にしてなかったけど、ララにまで手を出したなら別だ。
しかもこんな…明らかにやりすぎなことを…!」
零くんは顔をしかめて、私の手を握る力を強めた。
すると諸伏くんが、反対側の手を握ってくる。
「諸伏くん…?」
「へへ、少しでも不安を和らげられたらなって。」
「…ありがとう。」
少しでも、誰かの温もりを感じていたかった私からすれば、諸伏くんのその気遣いはとても嬉しかった。
零くんの力がさらに強くなったので、少し痛かったが。
そんな私たちの様子をニコニコと朗らかな笑顔で見守っていてくれた住友先生は言う。
「先生から、注意をしましょうか?」
と。しかし、先生からの注意でどうにかなる問題だろうか?
私が考えあぐねていると、零くんは首を振る。
「いえ、もっと効果的なやり方があるので…」
それに対して、諸伏くんもウンウンと頷いた。
「そうですか。さすが降谷くんと諸伏くんですね。立川さんをしっかり守ってあげてください。」
「「はい…!」」
先生の言葉に力強く頷く彼らを、私は心強く思う。
こうして、何とか私はその日帰ることができたのでした。
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