01.夢の中





ふわり、ふわり。

水に揺蕩う感覚に、ゆっくりと目を開ける。

夢を、見ていた。



てっきりプールか何かの中かと思ったら、辺りは真っ暗。ただ果てしなく暗闇が広がっている。
水の中のような感覚なのに、息は苦しくないし、冷たくもない。濡れた感覚も無い。

特に考えることもなく流れに身を任せていると、どこからともなく声が聞こえてきた。


『……おめでとうございます……貴方は……選ばれました……』

選ばれた……?何に?
生憎、わたしは綾鷹でもなければにごりほのかでもない。
最近はコンサートのチケットを応募した覚えもない。

『……違います……貴方は……全てを……やり直せるのです……』

意外と女神さま?のような声はしっかり否定した。
っていうか……全て?
そんなの無理だよ、やり直したいことが多すぎる。しかもどうやって……

『貴方がやり直せるのは……高校3年間……まるごとです……』

………………高校、3年間?
心臓が、一度どくんと音を立てた。

『……貴方と、貴方に思い入れのある人物のみ……今の記憶を有したまま……3年前の4月1日に……巻き戻ります……まぁ……細かいことは……気にしなくて大丈夫です……ご都合主義なので……』

ええっ、その日って入学式じゃん!
……っていうか、今、メタい言葉が聞こえたような。

『……気にしないでください……とにかく、今度こそ……今度こそは……後悔のないように過ごすのです』


エコーがかかったような女神さまの声が、最後だけはっきりとそう主張した。

だんだん暗闇に光がさす。

「っまぶし……っ」

わたしは、この光を知っている。
紛れもない、あの朝の日差し……私が一番嫌いな光だ。

ああ、やっぱりこんなことは夢だったんだ。

朝の光はそんな絶望を一緒に連れてきた。わたしはしぶしぶ重い瞼を上げた―――

女神さまも言うようにご都合主義です。暖かい目で許してください



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