
#009
あれだけ長かったのに、一瞬で終わった一時間。
バンドのメンバーが片付けをしている間、黒瀬が来てくれた。
「……来てくれて、ありがと」
少し照れたように頬を染めながらぶっきらぼう―――黒瀬にしては愛想がある方かもしれない―――な表情で、俺たちのテーブルに来てくれた。
「っううん、こちらこそ!!」
慌ててお礼を返すが、
「……っその、なんていうか……すごくよかった……っああもう、うまく言えないな」
「ふふっ、真白ちゃん語彙力無いもんね」
「っもう、うるさいなももちゃん、……なんかごめん、でも、本当にすごかった!聴けてよかった」
「……そ。ありがと」
「あるぇ*?黒瀬くん、照れてるぅ*?」
「森山。お前出禁な」
「ごめんってばぁ」
口々に感想を言っていると、カウンターの奥から店員さんが来た。
「こんばんは。今日は来てくれてありがとうね。
わたしは桃奈の母の和恵です」
そういってにこりと微笑む方は、確かに少し桃奈ちゃんに似ている優しそうな人だ。
「みなさん、今日は晩ごはんはどうします?」
「えーっと……まだ決まってないです」
「そしたら、ここで食べていかない?良かったらバンドの皆さんと一緒に」
「っえ、」
いいの!?!?
俺としてはめちゃめちゃ嬉しいけど、でも……
「バンドの人達ならもうお前らのこと知ってるよ。俺が話したから」
「え、そうなの?」
「ああ」
「一緒に食べるならまかない料金でお出しするわね」
「っあ、ありがとうございます!」
ほらほら、と案内されるがままに大きめの席に移った。
「