#001 Prologue
――――――君に、恋をした。
鈍器で思いっきり殴られたような、それでいて柔らかな毛布で包まれたような。心臓は壊れそうなほど動き出し、意識はどこか他人事のようで君から離れない。
恋をすると、こんなにもぐしゃぐしゃになるものなのか。
甘く、柔らかな声が僕の耳を劈いた。透明な瞳が、胸を貫いた。
ヨーロッパの美少年達の聖歌隊だとか天使だとかそういう容貌ではない。だが、色素の薄い、虹色に煌めく髪はしっとり濡れ、白くきめ細かな肌に伝う汗が弾ける。その輝きと美しさはまるで天使のようだ。
その声は時々掠れるが、それがかえって艶を帯び、切望するようなハイトーンは曲の切ない空気感や透明感をより濃く出している。
どこまでも届くような真っ直ぐな声が、会場に反響するようで―――いや、俺の頭の中で何度も響いているだけなのか。
ステージの光を受け反射する君に、恋をしてしまったのかもしれない。
――――――最初で最後の恋を。