今や国内に留まらず、世界中で絶大な人気を誇る音楽ジャンル、『K-POP』。
その人気故に、アイドル達にはペンとのトラブルが無いわけではなかった。
同担拒否過激派、認知厨ならまだ可愛い方だ。
どこまでも彼らをつけ回すサセンペン。
執拗で加減を知らないアンチ。
彼らがいるため、アイドル達とペンが物理的に近づく機会があろうものなら、マネージャーやスタッフは死ぬ程肝を冷やす。
以前まで、男性アイドルグループのマネージャーは、アイドル達への配慮から男性マネ、そして有事の際ペンに物理的に接触できるぽちゃマネだった。
しかし。
「触んなデブ!」
「キモいんだよゴリラ!」
一部の過激なペンの罵詈雑言はマネージャーにまで及ぶようになり、このままではアイドル達どころがマネージャーまで危険に晒されてしまうことになる。
「――――――そこで、君をSuper Juniorのマネージャーにしようと思う」
「……私、ですか」
事務所の人事部、現マネージャー、諸々の前に座る小柄な女性が、戸惑ったように返事をした。
キュッと縛られたポニーテールは緩く巻かれ、彼女のキリッとした表情とは裏腹に可愛らしさを感じさせる。
着ているスタッフTシャツと細身のズボンから彼女が如何に華奢かが目に見えて解る。……逆に言えば普段の業務にもスタッフTシャツを着てくるような、自分に無頓着な性格でもあるが。
「君みたいな美人なら過激ペン達も強くは口出し出来ないだろうし、それに君がアイドル達と決して恋愛関係にならないことはよく解っている。
……それに、君ならマネージャーとして大いに力を発揮できるだろうからね」
「そんなに褒めて頂かなくとも、頂いた仕事は全うします」
「ありがとう。助かるよ」
彼女と交渉―――といっても彼女に交渉のつもりなどなく、ただ仕事依頼の話だったのだが―――をしていた人事部の男性は、心から荷が降りた様なほっとした表情を浮かべた。
「ありがとうございます……!」
「女神よ……!!」
「っしゃあああ!これで俺たちの平穏は守られた!」
「何言ってるんですか。貴方達にも働いて貰いますからね」
喜ぶマネージャー達の声を一刀両断する彼女―――ルナこそが、SMエンターテインメント最強の『鋼の女』として知られる人物であった。