世界が破滅した
岩村に続いて春日と2人で集合場所である体育館に入る。ここまで来る時に外を見ていたけどあと何個か体育館があった。ここは赤司の家が所有している土地らしくて、あの体育館とか遠目に見えた大きな建物も赤司のモノだ。素直に凄いなと思ってしまう。うんうんと頷いてるといつの間にか来ていた津川に首を傾げられる。頭の上にははてなマークが飛び交っている幻が見える。不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまいムカついたので頭をショリショリしておいた。いつもなら嫌がるのに今日は抵抗されなかったので思う存分ショリショリしていると、体育館にマイクに通された声が響いた。ふと舞台上を見ると赤司が立っていた。
「皆さん、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます」
マイクを手に持ち赤司が挨拶を始める。何故この合宿を行うのか、どんな内容なのか等と話していたが半分ぐらい聞いていなかった。なんか休息なんちゃらとか言ってた気もする。本当に興味が無かったので後で春日にでも教えてもらおう。そう思いながら欠伸をすると、隣からぶっと吹き出す音が聞こえた。誰だよ失礼だなと隣を見るとそこには正邦と同じく王者と呼ばれている秀徳の選手がいた。目に痛いオレンジ色のウインドブレーカーを見に纏った黒髪のそいつは未だに口元を抑えてプルプルしていた。
「いや笑い過ぎじゃね?」
「っ、やーすいません。隠さずに堂々とするからつい」
「だって赤司くん話長いもん。校長先生かよ」
「ぶっふぉ!くっ…こーちょー…ふふ…」
「お前ゲラか」
確かPGの高尾。特殊な目の持ち主で1年にも関わらずスタメン入りしたハイスペックなヤツで、あのキセキの世代NO.1シューターであった緑間の相棒と記憶している。それがそのまま口に出ていたのか高尾はほんの少しだけその大きな目を見開き、直ぐに細めて笑った。
「へえ、俺の事知ってるんすね」
「いやいや知らん方がおかしいでしょ。私、一応これでも正邦のマネージャーだし相手の事はちゃんと覚えてるよ。どーせ高尾も私の事知ってるくせに」
「もちろん、名字名前サンっすよね?宮地サンから色々ときいてます」
宮地サン、秀徳の宮地清志。彼を知ったのはバスケ関連ではなく当時好きなアイドルグループの現場でだった。その日は握手会だったけど、直前に推しメンの握手券を落として焦っていた私に声を掛け一緒に探してくれたのが宮地だった。無事に見つかり握手会を終えた私達はすっかり意気投合し、連絡先を交換してそのまま仲良くなった。今もたまに連絡してたりする。私は推しメンのスキャンダルが出て死ぬ程落ち込んでしまいもう降りてしまったけど、宮地はまだみゆみゆを健気に推している。ファンの鑑過ぎる。
「宮地からなんか変なこと吹き込まれてない?」
「あー、アイツはまきこ様を裏切って男に移ったって凄い顔で言われましたね!」
「言い方!裏切ったのはまりこ様だっての!男に移ったっていうのは、まあ否定出来ない」
「ギャハハ!そこ否定しないんすか!」
「だって降りてから彼氏作ったのは事実だし」
「えっ、あー……なるほど」
「は?」
さっきまで笑い袋のようだった高尾が急にピタリと笑うのを止め、何か呟きながらニヤニヤとしている。それがなんだが気に食わなかったので素直にキショいと伝えると辛辣!と言ってまた笑われた。ドエムか?本当にキショいかもしれない。そうやって高尾を戯れていると赤司の話は終わったのか、春日にちょいちょいと服を引っ張られた。そっちに顔を向けると不貞腐れたような顔をしていた。いつもより唇が突き出しててちょっと可愛かった。
「なに」
「……なんで俺じゃなくて他校の年下構うん?」
「えー、なに、寂しかったの春日くんは」
「うん」
全力でからかおうとにやけながら聞くと服の裾をギュッと握って頷かれてしまった。ダメ?と物凄くあざとい上目遣いでこちらを見てくるからそんな事ないって首を全力で降って即答すると、良かったといつもの様にへらへら笑うので私もつられて笑った。岩村にはイチャイチャするなと私だけ後頭部を叩かれた。マジで解せん。でも春日が撫でてくれるから許す。命拾いしたな岩村よ。
そんな様子を見ていた高尾は名字さんは宮地サンの気持ちにも気付いてないんだろうなと考えてしまう。いつもはちょっとウザイくらいに厳しい先輩にほんのちょっとだけ同情した。
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