ぼくらの土曜日「典明くーん! ゲームしよー!」 アパートの一室に明るい女性の声が響く。 花京院が顔を上げた。彼女の持っているゲームを見て笑みを浮かべる。 「ええ先輩。なんですかそのゲーム」 「この前雑誌に載ってたやつー! 格ゲーだよ」 「それはそれは」 花京院典明と後藤百合は大学の先輩後輩だ。そして、ふたりともスタンド使い。 百合は今まで自分以外のスタンド使いに出会ったことがなかった。花京院の友人はスタンド使いが多く、能力の使い方や将来の身の振り方など、いろいろ参考にさせてもらっている。 「私このシリーズ、3作目以降やってないー」 「僕はずっとやってますよ。ハンデ付けた方がいいかな」 「まってよ! 私だって昨日頑張って練習したんだから! まずはなんにもなしで戦ってみて!」 「いいですけど、負けて泣かないでくださいね」 「泣いたことなんてないじゃない!」 ふたりともゲームが好きというのも気が合う理由だろう。こうして時間があけばお互いの家を行き来する程度には良好な関係を築いている。 「先輩、明日はなにか予定があるんですか?」 「ないよー学校休みだしバイトもないし」 「じゃあ泊まっていったら?」 「そうする。夜ご飯なにがいい?」 「なんでも」 「男の人ってすぐそういうこというよね」 「昔の男性の存在を臭わせる発言はやめてください」 「器が小さい」 画面上では花京院の操るキャラクターが百合のキャラクターにコンボを決めている。ハンデなしの勝負は典明の圧勝だった。 「ゴメン典明くん次ハンデつけて」 「いいですよ。必殺技ひとつ封印しましょう。キャラクター選択権もそちらに譲ります」 「うわこの余裕腹立つ」 「実際余裕ですから」 「グギギギギ」 百合が悔しそうに歯噛みして、典明が楽しそうに笑う。 花京院典明と後藤百合は大学の先輩後輩だ。そして、ふたりともスタンド使い。 ふたりともゲームが好きというのも気が合う理由だろう。世間一般で所謂"恋人"と呼ばれる関係を築いている。 ふたりが同棲を始めるまでに、おそらくそう時間は掛からないだろう。 今日も花京院典明が住むアパートには、ふたり分の楽しげな笑い声が響いていた―― [しおりを挟む] 目次戻る |