何故そんなことになったのかの原因を究明しようと、クロウリーと共に数多の文献があるという図書室で調べることに。ちなみにグリムはよく寝ていたので鏡の間で寝かせてきた。
しかし、いくら調べてもユウ達の世界について表記された本は一切ない。
というか。
「…ディアクロウリー」
「学園長と呼びなさい。で、何ですか?」
「学園長。これ、英語ですよね」
「えぇ。この世界の共通言語。この世界であれば、あらゆる国に行こうとこの言葉でコミュニケーションが取れます。それが?」
「…古代語…」
「はい?」
「………これ、自分達の世界では、古代語として在ります…」
わぁ。イッシュの美術館で見た叫びというタイトルの絵画そっくりの顔してますね、学園長!
ウケる。(現実逃避)
「どどどどど、どういう事ですか!?あなた、未来の人間だとでも言うんですか!?」
「いや自分に言われても分かりませんがな。古代語としてあるってだけで軸の世界は全く別かもですよ?」
「古代語だろうが現代語だろうが使用されている言語が一致しているだなんてどんなミラクルの可能性ですか!!?」
「知りませんよ!古代語として残ってはいますけど、自分の世界に魔法だなんてのはあってないような、なくてあるような、そういう曖昧な感じになってるんですから!先程の騒ぎで見たような魔法っての自分まっっっっっっったく!!知りませんし!!!」
「なぁ…!?そ、そんな事が…」
ガァン!!!と大きくショックを受けたようで、その場に崩れるクロウリー。オーバー過ぎるリアクションにユウはついていけない。いい大人が何をしてるのだろうか。
「いえ…ですが、それこそ困りました…時間転移などは安易に行えない魔法。加えて、魔法がそこまで薄い世界となると…闇の鏡でもどうなるか……ところであなた、念の為に、えぇ、何かの役に立てるのかという期待は薄いですが、身分証などはお持ちですか?」
「ポケモン図鑑ならありますけど…」
「ポケ…?」
「とりあえず見てください」
そう言いながら、ウエストポーチからポケモン図鑑を取り出して渡す。ガラルの図鑑すごい。スマフォになる。渡す前にネットに繋がるか試したが、ダメだったが。機内に保存されてるデータは見れるらしいので御の字だ。
ちなみにガラル以外のポケモン図鑑もウエストポーチに入ってる。
この図鑑には一通りの個人情報なども搭載されているのだが…。
「…これは一体、どこの言葉ですか…?」
「デスヨネー」
英語が古代語の世界。ポケモンの現代語が通じる訳が無いのだ。
ユウが古代語と理解したのだって、仕事で関わると予測していて、かつ興味があるからと独学で学んでいたからだし。本来のユウの時代の人が来ても、何て書いてあるか分からないだろう。何故か聞いたり話したりは出来るが。不思議設定万歳。
「一応このページが自分の個人情報欄なのですが…」
「ふむ、全くと言うほど分かりませんね。分かるのは数字表記くらいでしょうか…」
「おぅふ」
「はぁ…これでは保護者の方への連絡も、やはりというか、難しそうですねぇ…」
長い溜息を吐く学園長だが、本来その長い溜息を吐きたいのはユウの立場である。
「…保護者のいない者を路頭に迷わせると分かっていて放るのは、教育者としての良心が耐えられません。私、優しいので」
「で、結局自分はどうすればいいんですか」
「え、冷た過ぎませんか……ま、まぁいいです。えぇ、それで、それなのですがね。今学園には、寮としては使用していない建物があります。掃除などをすれば寝泊まり程度であれは出来るでしょう。そこであれば、宿としてしばらく貸し出して差し上げますよ!その間に、あなた達が元いた場所に帰れる、安全な方法を探します!私、優しいので!」
「はぁ…イーブイ、どうする?」
ユウ自身は旅の野宿経験があるので、雨風を難なくとは言えなくても凌げる場所であれば、何ともなるという感覚だ。
しかし、パートナーであるイーブイが不快だったり解せないのでは、どれだけ縋れる藁が少なくても手に取ったりはしない。ユウの心情はいつだってポケモン優先なのだ。
「ブイ…」
イーブイは少し思案する。ユウの心情を知ってるからこそ、イーブイはユウの分までユウを心配する。
けれど、どう考えても自分達の立場が不利であることをイーブイは理解していた。ポケモンだから人間の情勢などには疎いが、だからって全部が全く分からない訳では無いのだ。この提案を飲まなければ、もっとシビアになるかもしれないという危機感がイーブイは感じ取った。
なのでイーブイは、渋々、ほんっっっっっっっっっっっっっとうに、渋々、頷いたのだった。
「じゃあ、お願いします」
「えぇ!あぁ、なんって優しいのでしょう、私!」
「そういう茶番いらないので、その建物に案内してください」
「あなたの方が茶番多かったじゃないですか!冷たいですねぇ…」
何度も言おう。
自分で自分を優しいという人は優しいとかけ離れているのだと、ユウは旅をもって嫌という程に知っているのだ。
信じられるはずがないのである。
「あっ学園長、鏡の間戻ってくださいよ。グリム回収しなくちゃ」
「おっといけない。よろしくお願いしますね」