いつもは着ないけど、今日くらいは……。
そう思って、淡いピンクのワンピースを用意してみた。それから、柔らかいクリーム色のカーディガン。
ガーターでストッキングを止めて、それから髪の毛は緩くまとめて、ええと……そう。
和成はリップクリームだけでいいっていうから、日焼け止めと、それから…この間、買ってもらったリップクリーム塗って。
落ち着かない、けど。これで喜んでくれるなら。
オレンジのリボンが付いたパンプスと、カバン…は、この間…の、で、で、デデ、デートの時に買ってもらったハートのモチーフのやつ。
なんか改めてデートって言うのって恥ずかしいな……。
でも、でも。久し振りのデートだから。
久し振りで、お互いに会いたいなぁって想ってるのが嬉しかったから。
少しは思ってくれてるんだなって。
だから、少しは、すこしは…少しくらいは、和成に釣り合うように、なりたい、から。なんて。
玄関の大きな鏡で確認して。
………なんか、おかしくないか?
…………………ちょっと女の子っぽすぎたか?
ううん、と唸っていたら時間を知らせるアラームが鳴った。
「ひゃあっ」
もう家をでないと!
家を出て少し遠い駅に待ち合わせだし、普段は履かない靴だから、何かあった時の為にそろそろ出ないと。
ああでも、やっぱりこんな、これじゃ……ただの浮かれた女だ。とてもじゃないけど和成に相応しくない。うう……
そんなことを考えてたら、スマホに和成からメールがあって、それを確認する。
『もううち出た?オレは出たよ(ゝω・)』
返事を悩んで、それでも結局。この格好とか考えてらどう考えても浮かれてて。うう。
『私も出た』
なんて素っ気ない返事を返した。
本当は、和成には愛想のいい可愛い子が似合うと思う。おれみたいな女より。
いつも思ってしまうのだ。だって。
和成はとても良い奴だし。かっこいい、と、おもう、し。
でも少し早足で、その考えを振り払うように待ち合わせ場所までいく。
あぁまただ。
和成はいつも待ち合わせ場所で女の子に囲まれてる。
和成。近いのに、遠くて。
和成、おれさみしい。…………なぁんて、いうかよ、ばぁか………
和成、いつもの、眼は?おれのこと気付かないの?
和成
近いのに、遠いな。
「今日は先約あんのー。無理だから!」
和成は相変わらず愛想がいい。
やっぱりおれなんかより可愛い子がいい?
ぎゅ、と少しだけワンピースを握り締めた。でも。でも、選んだのは和成なんだ。てっぺいにもそう言われたんだし、もっと、自信を……でも、そうやって良くないループに入りかけて、頭を振った。
あぁもう!おれが彼女なんだから、フられてから考えろよ!!
そう考えて一歩踏み出して、その時。
「えー、もー、今日はダメだってば!!また今度ね!」
え。
時間が止まる。今まで、そんな約束したことないじゃないか。
ぎゅっと唇をかんで、ぎゅっ、とまたワンピースを握り締めた。
「あ……っ!?やべ、真さ……!?」
もうなんにも聞きたくなくて、踵を返して走り出した。
ぼろり、涙が落ちたのは、きっと気のせい。
気のせい。
気のせい、なのだ。
和成、おれ、馬鹿みたいだな
おれのバァカ
おれなんか好きになってくれるはずなかったのに。
おれの、ばぁか
零れた涙は嘘だと言い聞かせて。
愛しい想いは
かなしいおもいは
ぜんぶいっしょだ。
曖昧哀唄
(かなしい)
(愛しい)
「先約って……あれまじだったんだ……??」
「えー待って、今の子めっちゃ可愛くなかった????」
「分かる!!えーーでもあんなに自信なさげなのとかめっちゃ可愛いじゃーーん??」
「え、ってかあの彼氏ここが有名なナンパスポットだって知らない感じ??あの感じだと女の子の方ナンパされたらやばくない?」
「ああ、それはないみたいだよ〜ほら!」
「え?なになに、花宮真……?高尾と今日デートだったっぽい!いいもん見たーー」
「『でも女の子たちに逆ナンされてるの見て泣かせてたわ……高尾終わったんじゃね??』有名なんだね、あの子」
「悪い噂を流されてるみたいだね……えー?あんな可愛い子に悪い噂とかやばいじゃん!男はみんな狼なんだって知らないよあの子!
「
「あっ、君らもそう思う!?(あれ何この子可愛い)」
「こういう、花宮さんを守る会っていうのがあるんだけどどうかな!?やばい可愛い」
「えっ、あ、はい(何この人かっこいい)」
「へっ(かっこいい)」
「「「「(運命??)」」」」
───────こうして、いつの間にか花宮真を守る会は出来ていくのである。
彼女のおかげで付き合うことが出来た彼らもまた、花宮過激派となる。
そしてこの後、高尾は花宮真を守る会のメンバーにじろりと見られまくって霧崎第一に教えられ、それはそれは見事な悲鳴を上げたので逆に花宮が高尾の周りをぐるぐるしていて可愛いと掲示板に載った。