愛縁祈縁








 ないて、いない。
 つらく、ない。
 だって、だって、分かってたのに。
 おれのことなんか、好きじゃないって、好きになるわけないって、あんなに思ってたのに、どうしてこんなに……こんなに、辛いの?




 それでも足は止まらず、走り続けた。見慣れた体躯に周りにはカラフルなキセキの世代。



 あぁ、会いたかったわけではないのだ。




 会いたかったわけではなくて。ただ、暇になっただけなのだ、と。



 ガチンと頭を殴られて、涙が落ちた。悲しい。悲しい。なんで。
 またひとつ、心にごとりと重荷が落ちた。

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。他の人を見たら嫌なんだ。






 ぼふっ!!花宮はそのまま、木吉に飛び込んだ。
 意味がわからなくて、頭の中を駆け巡るそれが分からなくて。

 キセキの世代とのストバス中に、飛び込んできた小さな身体。


 今日は、で、で、デートに、誘われてる……と小さくモゴモゴと言われたのを覚えている。


 ドンっ!
 ぶつかった拍子に、木吉はたたらを踏む。
「………うぉ、!?」
 それでも慣れたその体温に木吉は躊躇い泣く後ろを振り返る。
 見慣れた、最近は強がって来なくなった小さな身体が震えていた。
「はぁ!?てめえはなみっ「どうしたんだ?花宮、最近来なかったのに」

 その言葉どころか、花宮が木吉に飛び込んだその瞬間にぱしっ!と伊月に口を塞がれた日向と、黒子に口を塞がれた火神。
 緑間に口を塞がれた黄瀬、紫原に口を塞がれた青峰。安定である。

 後ろから抱きつかれていては、何も出来ない。ポンポンと手を叩いた。
「!?」

 そこで、日向と火神は気が付いた。
 花宮が泣いていることに。小さな細い肩が震えていることに。
 日向は伊月に目線で合図をして口から手を離してもらう。
 火神もじろりと黒子に睨まれて頷いた。



「ふ、ぅ、うぅ……」
「どうした?花宮、前からじゃないと抱っこしてやれないぞ」
「………ってっぺ、」
「うん。どうした?霧崎が辛くなったか?」

 これは違う理由だろうと分かってはいるけれど。だってデートだと……何をされたんだ?こんなに泣くくらい。
 てっぺいと名前を呼び出すくらい。

 ポンポン、ポンポン。手をリズムをつけて柔らかく叩く。
 力が緩んだ隙に、くるりと身体を捻って前から花宮をすっぽり抱え込んだ。

「ふぇ、えええ……っ」
「どうした?みんながいるところで来るなんて。何かあったのか?」
 走ったせいで乱れた髪の毛を下ろさせて、サラサラと頭を撫でる。
 霧崎第一の話は聞いている。あの顧問はまた花宮に何かしたのだろうか。けれど、と伊月を見るけれど首を振られた。今吉さんからも霧崎第一からも情報が入ってない。
 ならこれは……やっぱりデートの相手なのか。

「…………っう、ふ……」
「…………花宮…」
「…………っ、ふ……くっ……」
 木吉は、辛そうな顔で花宮の背中を叩く。涙がポロポロ溢れて、溢れて。

「花宮、はなみや。まこ。まこ、どうしたんだ?」

 優しく優しく、背中を叩いて。抱き締めて。花宮が唇を噛み締めて、何も聞こえなくなる。漏れ聞こえる声も、嗚咽もなくなって。静かに静かに泣く。それが辛くて、辛くて。痛くて。
「まこ、まこ。ほら。俺がいるぞ。どうしたんだ?」


 誰も何も言えないでいたら。

「!?マコちゃん!?どうしたの!?征ちゃん達が何か!?」

 飲み物を買いに行ってた実渕達も帰って来てしまった。
 ちなみに買い物袋は落とされた。

「違うよ!?僕達は何もしていない!」

 赤司が慌てて実渕に返した。あんなに赤司が焦るほどの何をしたんだ……

「誰!?誰がマコちゃんを泣かせたの!?教えて頂戴!!ちょっと話付けてくるからさ?」
「玲央が男の人になった!!」
「レオ姉は男だよ赤司!?」
「黙れ、二人とも」

 赤司と葉山はお互いに口を塞いだ。

「………」
 花宮が実渕と木吉を見上げた。
 目が赤くなって痛々しくて、それでも、花宮は見上げた。

「どうしたの?マコちゃん」
「どうかしたのか?花宮?」
「…………おれ、ばかみたいだ………」

 はは、と笑った。涙が残る顔で、ポロリ、と流しながら。

「え?」
「どうして?マコちゃん、どうしたの?」
「……ひさしぶりに、あいたいって、」
「うん」
「ええ」
「おれも、あいたいって、」
 おもって、て。花宮の、掠れた声が。聞こえる。
「……………」

 涙をすくい取る木吉の指に、次から次へと溢れる涙。
「まちあわせ、して、」

 花宮が声を詰まらせながら、訴えていく。

「そしたら、こえ、かけられてて、」




 辛そうに下を向いて、苦しそうに声をあげて。

「いま、むりだから、」




「…………こんど、あそびにいこうって、」


 消え入りそうな声で。
 顔を覆って。



「おれ、に、きづかな、て、…………」





「………………なんで、………おれは、しんじ、ちゃ、」


 辛くて、苦しくて。声にならない。


「もういい。もういいよ、まこ」
「もういいわ、マコちゃん。」

「………ってっぺえ…!てっぺ、てっぺー…!れお、れお、れ、れお…!!」
「辛かったな。もう大丈夫だよ」
「そうね、もう大丈夫よ。苦しかったわね…」

 ぎゅう、と抱き締めた二人に。




 氷室は濡れタオルを渡し、火神はタオルを渡した。

「有難うな」
「有難う」
「………ひっく…」
「マコトが泣いてると悲しいよ」
「花宮、さんも女の子だ、ですよ」
「………っ!」
「えっ」

 ひぐっ、と息を呑んだあと、ぼろぼろと涙が溢れてきた。

「えっ、えっ?花宮、さん?」
「………っおれ、おれ、は、女の子らしくないから…!」
「?なに今更のこと言ってんだよ?胸もねえし、喋り方だってよ、お前女じゃねえじゃん。男だろ」





 ポカーン。……………………………………ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ぽく……ばっ、と振り返った。




 キセキの世代は揃って間抜けな顔。
 火神と日向と伊月も揃ってポカーンとした。

 皆が揃って、青峰の顔を凝視した。








 木吉と実渕と氷室は、にこやかに微笑んでいる。

「……………っ、」
 ぼろぼろぼろ、とさらに溢れた涙。

「……………っぱ、り、そ、だよ…
 な…ごめん。……っおれ、かえっ、「……………っ見つけたああああああああ!!!!」

 高尾は見付けたと同時に叫ぶ。
 息が上がる。ハァハァと、息を荒くして、汗だくで。
 なんつう状態かと突っ込まれそうだった。
 それでも、それでも。

「……………っ」

 ばっ、と花宮はすぐに木吉の腕からも逃れて走って逃げていくのを、高尾は追い掛ける。

「待って待って真さん!!!!誤解なんだって!!」
「!まこ!!」
「まこちゃん!!」

 木吉と実渕も追い掛け始めたのを見て、伊月と日向が追い掛けた。









 ここなら。ここなら今度は。


 遮蔽物もない。人も少ない。

 逃がすことは、ない。





「待って!まって真さん!」

 チクショウ足が早いんだよ!!
 流石に男子バスケ部で教えてるだけはある。俺の方が身長あるのになんで追い付けないんだよ!



 走り去る花宮の、歩幅で少しずつ間が狭まる。狭まって。





 どん!
「いってえ!何すんだよ!」
 がしっ、と掴まれた花宮の腕。
「ご、ごめんなさ…」
「ゴメンなさいで済むか!慰謝料寄越せ!」
「……………っ」
「あっれえ?可愛いじゃねえの?何泣いてるんですかぁー?慰めてあげよっか?」
「…………いや、」
「はは、可愛いねー。慰謝料の代わりに遊んでよ。そしたらチャラにしてあげるからさ!」
「………っ、離し、」
「ほらほら、こっち!いい所あるからさぁ!」
「あーもう、抵抗すんな!」
 ぐい、と無理やり連れていこうとした瞬間。
「ひ、や、ぁ……」
「すみませえん。この子俺のツレなんですよぉ」

 ふわりと感じる温かみに、花宮は目を見開いた。

「この子ドジなんですよね、すみません。でも怪我がなくてよかった」

 捕まえられたことと変な奴に絡まれてるのを助けられそうなことにほっとして、肩に手を回して引き寄せる。最後の言葉は、勿論花宮に向けて。

「はぁ?お前はお呼びじゃねーよ!」
「この子に誠心誠意謝罪してもらうからよ!」
「怪我しねえうちにどっか行け!」
「あっはは、冗談。この子謝罪しましたよね?もうおしまいでしょ?」
「そんくらいで終わるかバーカ!」
「弱いんだから引っ込んでろ!」
「ほらほら、来いよ!」

 ぐい、と花宮を引っ張る。
「や、やだ…!」
 驚きで止まっていた涙がまた潤んでくる。
 じわり、じわり。


 ころり。落ちてきた涙が、高尾の手に落ちた。






 ぶちっ。


 頭の隅で、いい音がした気がした。
 あーあーあーあー、もう知らねえ。

 そう頭の中で吐き捨てた。



 ひゅんっ、と音がして花宮がびくりと身を竦めて目を閉じて。



 ガキっ!バキッ!ドガッ!



 鈍い音。いつも聞いてる音に身が竦む。だけど聞こえたのは低い、低い高尾の声だった。


「……………ガタガタうるせえんだよ。俺のツレだっつってんだろ、失せろ」
「……っ!覚えてやがれ!」
「…………………っ!」
「……っそんなスタイル悪いの誰が相手にするか!」
 バタバタと逃げていく奴らを無視して、高尾は花宮に向き合った。

「真さん怪我は!?」
「………っ、ない、けど、」
「…………………っ、よかった、ああああああああああああ……」
「…………………な、んで、ここに、」
「えっ?探したんすよ?普通に。走り回って、写真の子見ませんでした?って聞きながら。真さん走るの早いから………」
「………………おれなんか探さないで、女の子と遊んでれば、いいだろ……」
「ああああああああああああ!!違うの!違うよ!!あれは断っても断っても来るからその場凌ぎのつもりだったの!最初っから真さん以外と会うつもりも遊ぶつもりもねえから!!」
「どうせ、あいたかったのも、おれだけだろ、……緑間に、予定が入って、ひまになったから、」
「ちっっっっげええええええよ!?そこちっっっっがうよ!!」

「まぁまぁ、花宮。高尾くんも。ちょっとあそこまでもどろうか?なっ?」
「そうね。聞きたいこともたくさん増えたし。」
 ▼目が笑っていない 鉄心 と 夜叉 が現れた。



「…………………ハイ……」

 ▼高尾 は ガクブルしながら 返事を した。

























「つまり?」
「まことデートの約束しててその待ち合わせ場所でナンパされたその断り文句に『また今度』なんて言ったと」
「ハイ」
「そこへちょうどマコちゃんが来て見られた挙句、今日のデートが決まったあとにキセキの世代でのストバスが決まった話をしていなかったため、マコちゃんは高尾くんが緑間くんといる必要がなくなって暇になったからマコちゃんに連絡したように思われた」
「………ハイ」
「高尾くん………マコちゃんも良くないわ。でも、そこまでに至るまでは高尾くんが悪いわよ」
「……………ハイ…」
「そもそも、まこのそのままが好きだと伝え損ねてるんじゃないのか?まこが女の子らしくないからなんてこんなに大勢の前で言い出すほど思い詰めてるなんて」
「…………まこちゃん、俺にはもっと女の子らしい愛想のいい人が似合うんじゃないかって…」
「そこをどうにかするのが男だろ」
「そこをクリアしなきゃ意味がないじゃない…これからも同じ事を繰り返すの?」
「申し開きもございません」
「というかだ。
 待ち合わせ中にナンパされてしつこいから今度遊ぶ約束をするかのような返事をするってのはどういうことだ?
 まさかまこで遊んでいるのか?許さないぞ?」
「有り得ません。有り得ません。しつこ過ぎて雑誌に載ってたいい断り方を実践しただけで、真さん以外に興味ありません」




 高尾、見事なJapanesedogeza披露。














 その頃、花宮は。黒子と伊月に呼ばれた桃井と相田と、女子トークを繰り広げていた。

「キャーーーっ!本当ですか!?高尾くんやりますね!」
「やだ、そんなこと気にしてたの?喋り方なんてそんなに気にしないわよ!」
「………う、でも、おれ胸とかもねえし、…青峰にも……言われたし………」

 顔を赤くした花宮がモゴモゴ言うと、リコと桃井は真顔で一瞬にしてスパンと切り落とす。

「大ちゃんは別です」「青峰君は別よ」

「だいたい、そんなもんで引くくらいならあんたの事好きにならないわよ!元々あんたその喋り方なんだもの!」
「それに、スポーティで私は好きですよー?胸とか確かにないですけど…リコさんくらい?」
「失礼ね!あたしよりもないわよ!」
「!!…………」
「ちょっと!凹むんじゃないわよ!あんたのそのペッタンコな胸から下のラインが好き!!とかPGで惚気てるって伊月くんから聞いたわよ?」
「キャアアアアアア!!高尾くん大胆ですねっ!でも、ミドリンも高尾くんが花宮さんの話ばかりしてきてそのうち自滅するんじゃないかって言ってましたよー」
「………したわね、自滅」
「………しましたねえ、自滅…」
「………た、たかお、は、わるくねえ、し…」

 うろうろと目線をさまよわせてから言う。

「………っやだもうあんたいつもそうしてなさいよ!!可愛いわよ!」
「やぁーん!!花宮さん本当に可愛いです!!そ・れ・にぃ、知ってますよぉ?いつも高尾くんのこと、和成って呼んでるって!」
「!!」
 かーっ。頬が真っ赤に染まっていく花宮を、リコと桃井が抱き締める。



 後で大ちゃん(青峰君)絞める。そう思いながら。













 その横で。


 ニッコリ。黒子はいつになく、笑顔だ。


「青峰くん、僕は本当に、ほんっっとうに今日という今日は呆れました。女性が泣いているというのになんて事を君は言うんですか?」
「大輝…流石にないと思うよ…女性が泣いているというのもあるが、女性の身体のことはNGだ」
「青峰っち、サイテーっス…フォローのしようがないっスよ?女の子があんなに泣いてるのに…」
「峰ちん……流石にないよー…」
「青峰…貴様は本当にどうしようもないやつなのだよ…女性に年齢と身体のことは言ってはいけないと俺だって知っているのだよ…」









 聞こえてくるその言葉達に、高尾は我慢し切れなくなって正座から立ち上がり、ゆらりと青峰の後ろに立った。


「…………青峰?マコちゃんに、何言ったの?」


「!!」
 ビクリ!!青峰の肩が揺れた。
 黒子は冷たい目線を寄越すばかり。
 というか、キセキの世代であろうとも止められるはずがなかった。緑間でさえ絶対零度の目線で見てくるのだから。
 赤司はもう何も言うことは無い、好きなだけやるといい……と言わんばかりにお手上げのポーズをとった。

「ねえ、青峰?さっきからさ、マコちゃんの身体がどうとか聞こえてくるんだけど。…………まさかさ、青峰、マコちゃんの身体がどうとか、言ってないよね?」
「………………………………………………」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ(マナーモード)
「聞いてんの?ねえ?青峰?」
「ガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ」(激しいマナーモード)
「何?答えられないようなこと言ったの?ねえ青峰?答えてくれない?」
「ガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブルガクガクガクガクガタガタブルブル」(激し過ぎるマナーモード)
「あのね高尾、青峰はね、胸もないし、喋り方も男みたいだし、お前女じゃねえっていったよ」
「い!伊月…っ「先輩を付けてください」センパイ…っ」
「へええええ…ふうううううん……マコちゃんに、そんなこと言ったんだ?」

 後ろから感じる寒気に、青峰の顔が更に青くなる。しかしそこに。

「あっ、高尾気、にしなくていいよ?青峰は」
「え。」
「PGのライン、見てご覧よ」
 かち、と高尾はラインを開いた。


 伊月:青峰が花宮を胸もないし喋り方も女の子らしくない、お前は男だって言って泣かせました
 今吉:今どこや


 笠松:今日はキセキでストバスーとか言ってやがったよな、どこだ
 降旗:確か○○駅の所のストバス場だと思います
 赤司:降旗くんの言った所です
 福井:俺福井。いま◯◇駅にいるの。
 笠松:俺笠松。森山と◯駅にいるの。
 降旗:俺降旗。いま宮地さんと○○◇公園にいるの。青峰、轢く。
 今吉:ワシ○○駅。福井と会ったわ。
 福井:俺福井。いま○○駅にいるの。今吉と出会ったの。
 福井:今吉の顔マジやべえ目を閉じろ
 笠松:俺笠松。○○駅にいるの。降旗と宮地発見
 降旗:笠松先輩と森山先輩発見。二人とも顔が怖いです





 原ちゃん:分かった。あそこだね。
 古橋:許さない
 瀬戸:待って古橋待って!止まって!早い!
 山崎:これは…
 松本:青峰終了って奴か……?




「ね?」
 伊月の声に、高尾は顔を上げ、伊月を見てから頷く。
 そしてなんだかこれからの青峰にご愁傷さまでした。と唱えておく。








「まこちゃん」
「…………たか、お?」
「…花宮真さん。これから、俺とデートしませんか!」
 手を伸ばしたままばっと頭を下げる。花宮のオロオロした雰囲気だけを感じる。

「大丈夫ですよぉ」
「行って来なさい」
「…………う、うん…」

 それを後押しする、優しい気配と、そっと、目の前に立った愛しいあの子の気配。

「…………あ、の、」
「…………」
「………………………っ、お、おれで、よければ…よろこんで、」

 そっと手を重ねられた瞬間。高尾は小さくガッツポーズをした。



「真さんがいいんです!」



 花宮は一瞬だけ目を見開いて。

 ふわり、微笑んだ。
















 どうしても
 どうしても、君がいいんです。
 どんなに時間がかかっても、君に伝える

 君にだけ、伝える。



 [chapter:愛縁祈縁]




 祈り通じる愛し縁。








 瀬戸:駄目だ、古橋見失った……
 原:嘘でしょ!?瀬戸ちゃんが見失うとか!?
 松本:ああ…とうとううちからマジモンの犯罪者が出るな……
 山崎:いやもう犯罪者いるだろ。あの顧問。
 松本:それは別枠だ。
 瀬戸:あいつなんかと一緒にしたらザキが危ないんじゃない?
 古橋:ザキ絶許。今から殺りに行きます。










<< top Fine

index