平和に行きましょう。

いち


 なるだけ胸がデカくて口うるさくない女。虎落孟宗が恋人に求める条件といえば、概ねその2点に絞られる。
 胸の大きさは言わずもがなだろう。デカければデカいほど良いとまでは言わないが、無いよりある方が良い。見てよし触ってよし、あとついでにバイクに乗せる時に背中に柔らかな感触があるのはシンプルな幸せだ。
 次に口うるさくないこと。これまでの恋人達は孟宗の交友関係やバイクの趣味についてあれこれ口を出し、自分の言う通りにさせようとしてきた。良くも悪くも頑固さのある孟宗と、胸ばかりで性格には毛程も関心を寄せてこなかった難ありの彼女達の相性は必然的に悪かった。



 誰もが幸せになれる選択なんて存在しない。
 しかし、誰にでも幸せになれたかもしれない選択はあっただろう。
 口の中に含んだ飴をすり潰すように噛む。薄荷味のそれから強烈な清涼感と僅かな甘みが唾液に溶け込み、口腔内をうんざりするくらい満たしてきた。肺腑の奥に燻る不満は普段なら煙草を深々と吸い込み、紫煙と共に吐き出してしまえば治まるが、幼馴染からの貰い煙草でしか吸わない虎落のポケットにニコチンは詰まっていない。



































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