平和に行きましょう。
おなじさみしさ
沙良にとって「両親」は空虚な存在だった。物心ついた時から父と母と呼べるのは遺影の中にいる姿だけ。兄と祖母の言葉や記録から存在の認識に不自由はないものの、それらが沙良の思い出になる訳ではない。あくまでそれらは兄にとっての両親、祖母にとっての息子夫婦といった主観の共有でしかなかった。
声を掛けても返ってくることはない厚さ0.27mmの両親へ愛を保ち続ける行為は、沙良にはあまりにも虚しいのだ。
愛情には事欠かずとも「普通」から距離を置いた沙良の家庭環境下から、両親の代替性を身近な他人から見出すのは当然の流れだった。
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