01
『もうっ電気のばか!もう知らない!!』
寮へ帰る途中、電気と喧嘩した。
私という彼女がいながら毎日毎日他のクラスの可愛い女の子の話ばっかり。
最初は「あの子可愛いもんね」なんて無理して話を合わせていたけれどもう限界。
怒りに身を任せて一発ビンタをかましてやった。
乾いた音と共に手の平に衝撃が走って電気が小さく疑問の声を漏らす。
いつかこんな風に出来たら、なんてずっと思ってたけれど全然晴れやかな気持ちになんてなれなくて。
突然のことに驚いた電気は目をぱちくりとさせ、私の名前を小さく呼んだ。
「おいおいどうしたんだよ、」なんてへらへらした笑顔を見せておどけた様子の私はつい怒鳴ってしまったのだ。冒頭の心無い言葉を。
「な、に…怒ってるんだよ」
『それが分かんないならもう二度と話しかけんなばかっ!』
「お前大丈夫か?」と言いたげなその間抜けな顔が私を更に苛々させた。どうしてそんなに無神経でいられるの?
そういうとこ、本当に嫌い。
ぼたぼたと泣きじゃくっちゃってとても恥ずかしい。
電気は私がなんで怒ってるのか分からないらしく呆然としながら私を見つめていた。
それ以上顔を見たくなくて大股でその場を離れようとすれば一瞬遅れて電気もその隣をずっと付いてきて。
「なぁ俺なんかした?」
『知らない』
本人に罪の意識がないなら説明したって無駄。
それに、こんな心理状態じゃ落ち着いて話すこともできないだろうし、せめて一人になりたい。
あぁ梅雨ちゃん…梅雨ちゃんに会いたい。
止めどなく溢れてくる涙で視界がぼやける。
なんで私がこんな最低な奴のせいでこんな思いしなくちゃいけないのよ。
そんな思いで隣を付きまとう電気を睨めば慌てた様子の電気がまた口を開いた。
「悪いことしたんなら謝るからさ!な?な!?」
『…………ご機嫌取りならその子のとこ行けばいいじゃない』
私の腕を掴んで電気が茶化したようにこちらを見る。
空いている手を顔の前にして「ゴメン!」と謝る電気の口元は笑っていた。
掴まれた腕も私の名前を呼び続ける声も全部不快だ。
なんだか私ばっかり電気のことが好きみたい。
それがひどく悔しくて、苦しくて、悲しかった。
私を責め立てるようにどくどくと脈打つ心臓。
いつもは大人しいはずのそれが、息が苦しくなってしまう程痛むのはどうしてなんだろう。
まるで全力疾走をした時のような胸の痛みに急かされて出た言葉とてもは冷たい声色をしていた。
「は?誰のことだよ」
『C組の井口さんとか、E組の高橋さんとかB組の塩崎さんとか。あんたが今までかわいい系だのキレイ系だの言っていた女の子たちのことよ!いっつもいっつも馬鹿みたいに女の子の事ばっかり…ほんっと馬鹿みたい!!!』
一瞬、まずいと思ったけれど私の口は電気を攻撃する言葉しか出てこなくて。
堰を切ったように出てくる不満や怒りは涙と一緒に止めどなく溢れてくる。
息をする事も忘れて電気に罵倒をぶつければ、電気は呆気にとられた様子で私を静かに見つめていた。
小さく開いた口は私の名前を呼ぼうと少しだけ動いた気がしたけれど、敢えて無視をする。
ずっと掴まれていた腕からすっ…と力が抜ける。
ただそれだけなのに電気が私を手放してしまったかのように感じてしまって私の心臓は大きく跳ねた。
もうやだ、こんなの。私だけ苦しくて、どうしたって一方通行で報われない。
嫌な事言っちゃって、電気にも嫌われちゃった。
『もう二度と話しかけてこないで…っ』
振り返って見た電気の顔は見たこともないくらい情けない顔をしていた。
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