小さな女の子

「出久、大事なお話があるの……」


あれは、僕が小学校3年生の夏頃だったと思う。

少し涙ぐみながら話しかけてきたお母さんを見て、子供ながら何かとんでもないことが起きてしまったといことは察することができた。



「ひかりちゃんの、ご両親が亡くなったの……」



そう話すと同時にポロリポロリと溢れるお母さんの涙と、出てきた名前に思わず持っているオールマイトの人形を落としてしまった。


ひかりちゃんは、近所に住む幼馴染の女の子だ。
いつも笑顔で、かっちゃんにいじめられて泣いてばかりの僕にいつも手を差し伸べてくれる、明るく優しい女の子。
ヒーローのお父さんとお母さんが大好きだと、いつも嬉しそうに話していたそんな女の子だ。


身近な人がいなくなる。はじめての経験にまだ脳が追いつかなかった僕は泣くこともできなかったし、何か言葉を発することもできなかった。


大切な女の子が悲しい思いをしているかもしれない。
そんなことばかりを考えていたように思う。


ひかりちゃんのお父さんやお母さんにはとてもよくしてもらっていた。
特ににひかりちゃんのお母さんは、オールマイトの事務所で働いていた過去があり、何度も話を聞きに行った。
お父さんも救助系に優れた有名なヒーローということもあり、たまに話してくれる仕事の話はヒーローの夢を膨らませた。


あんなに大きな事件だったのに、当時事件の詳細は聞かされることはなかった。
今思えば、ひかりちゃんのことを配慮したお母さんが情報が入ってこないように気をつけていたんだろう。


いつもと違うかっちりとした服を着せられてお通夜の会場でお焼香に並ぶ。色んな場所から聞こえるすすり泣き声。


黒い服に身を包み、声を出さないように唇をキュッっと結びながら涙を流す彼女を遠くから見ることしかできなかった。


思えばひかりちゃんが泣いているのをみたのはこの時が初めてだった。
かっちゃんと言い合いになった時だって、転んで怪我した時だっていつも最後には笑ってた。

だからすごい強い子だなって、ずっと思ってた。

家族がいなくなるなんて、悲しいに決まってる。
彼女も僕と同じでまだ幼い女の子だ。


悔しそうに拳を握りしめていたかっちゃんもきっと同じことを考えていたと思う。


あの小さな女の子が泣かないように、支えてあげたいと。



シャローム