チビでムカつく女
『かっちゃん、何してるの?』
「うるせー!だまってろ!」
俺はこのチビ女がとてつもなく苦手だった。
『あ!わかった!ヒーローごっこでしょ??』
「うう、ひかりちゃん……」
俺がデクをいじめるという考え自体がそもそもないんだ、この女には。
『いずくん泣いてる!ってことはいずくんが助けられる側でかっちゃんがヒーロー役?』
「そ、そーだよ!わるいかよ!!」
『ずるいよ!わたしもいずくんを助けるヒーロー役やりたいのに!!!』
いつもヘラヘラしながら、人を疑うことをしない。
俺がどんなにキレても脅しても、ヘラヘラしたアホ顔で返してくる。
だから、あんな風に笑うところなんか見たことなかった。
「あ!?おまえ、今なんて言ったんだよ!!」
『だからね、お引越しすることになったの』
こいつのおじさんとおばさんの葬式が終わって数日たったとき、ババアに持ってけと持たされた肉じゃがを渡しに行くと、こいつの家の中は段ボールだらけになっていた。
葬式の時に泣いているのをみてから会うのは初めてで、また泣いているんじゃないかと少しだけ気にしてやっていたがその様子はなさそうだった。
ただやつれたようなその顔でヘラリと笑顔を見せるもんだから少しだけイラついた。
「はっ!どうせ引っ越すって行ってもすぐ近くだろ!しょーがねーから、公園で遊んでやるよ!」
『違うよかっちゃん、私東京に引っ越すの…』
「あぁ!?東京だとーー!?」
『お婆ちゃんが東京に住んでて、そこでしばらく一緒に暮らすの』
「………………」
『だから、しばらく会えないと思う…』
『あ!でもね!お手紙とかは書けると思うから、これ良かったら住所なんだけど……』
「クソが!!!!」
気持ち悪い貼り付けた笑みで笑うんじゃねえ。
どーせクソひかりが考えるクソみたいな意図はすぐにわかった。
心配かけないようにとか色々考えてるんだろうが、俺がお前なんかを心配すると思ってんのか。思い上がりもいい加減にしろ。
渡された住所の紙を個性で爆発させてボロボロにしてやった。
『………』
不安ならそう言えばいい、寂しいなら寂しいって言え、ここに居たいって言えばいい。
それなのに、またヘラリと笑ったチビ女の顔を見てさらに苛ついた。
「クソチビ女!!!てめえなんか、何処へでも行っちまえ!!!!」
肉じゃがの入った袋を投げるように押し付けて、俺は逃げるように家に帰った。
最後に見えてしまった表情に1mmくらいの罪悪感がないと言われたら嘘になるが、どうせ肉じゃがの入った容器を返しにやってくるであろうその時に少し遊んでやってもいい、そう思っていた。
そう思ったのに、姿は見せずに綺麗に洗われた容器と律儀に書かれた新しい住所の紙を袋を玄関に置き去りにされていた。
その袋を見たときすぐにアイツの家に走っていくと、その家にはもう誰もいなかった。
住所の書かれた紙は、また爆発してやった。
自分から手紙は出さずに、連絡が来たら返してやってもいい。そんなことを考えながら15歳になったが、とうとうあのチビ女から連絡が来ることはなかった。