剣を振る理由








大切だった人たちはもういない。


いつもおかえりを言ってくれたあの人も、私のことを大好きだと言ってくれたあの人もみんな、もういなくなってしまった。
全部全部、私が弱かったせいだ。


全部私のせいだ。


それなのに、なぜ私はまた剣を振るってるんだろう。
もう守るものはないはずなのに。
もう強くなる必要なんてないはずなのに。



『ッ!!・・・与えられし我が名はウィンディ、』


次々に迫ってくる魔物にあの人からもらった大切な剣を振るって、詠唱を続けていく。
魔物の群れを一気に駆け抜けたせいで、その先は壁しかなかった。
周りは追いかけてきた魔物達に囲まれている。

迷わずに壁を蹴り上げて、宙を舞った。
魔法陣が私と魔物達を照らしている。


『ヴィーズ・バーラ!!』


魔法陣から繰り出される水の弾丸に、魔物達の影はなくなり、あたりに魔石が散らばっていた。
もうこの辺り魔物はしばらく現れないであろう。
追いかけられる心配も、襲われる心配もない。

しかしながら、落ちていく体を守る行為を取る気にはなれなかった。

これまでの行動と、自分の気持ちの大きな食い違いに自嘲するような笑みが溢れる。


(このまま落ちたら、死ねるのかな・・・)


風の抵抗を感じながら、そのまま目を閉じれば、体力も魔力も限界だったのか、だんだんと意識が朦朧としていく。
そんなに高く飛んだつもりはなかったはずなのに、地面との時間をとても長く感じた。

次に目が覚めた時には、あの人たちの笑顔が見れればどんなに幸せだろう。

そんな叶わない夢を見ながら、暗闇へと意識は沈んでいった。