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硬い床を蹴って、高く飛び上がって、手のひらに当たるボールの感覚。


光が差す方向へ一直線へ進んで床に弾むボール。


湧き上がる歓声。

湧き立つ心。


全部大好きだった。





















「澤村 コレ、今んとこの入部届け」

「少ないな・・・昔は多かったはずなのに・・・」

「こっから増えるって大地!!」

「潔子さん!今日も美しいっす!!」



新学期のスタート。
廊下で話す4人の集団を遠目に見た少女は、にやりと笑って廊下を走り出した。

跳ねるように走っているからか、ゆらゆらと揺れるスカートに、すれ違う男子は頬を染めその少女を見送る。
周囲からの目線には慣れている少女は、そんなこと気にも留めずにその集団に飛び混み紅一点のメガネをかけた美女に思いっきり抱きついた。



『潔子ちゃん!今日も可愛いね〜!!!!』

突然抱きついてきた少女に、4人はギョッとした顔をするも、慣れたように話し始める。


「お前は、そうやってすぐ走るな抱きつくなと何回言ったらわかるんだ!」

『えー、いいじゃん!大地のケチ!』

「まぁまぁ、大地落ち着いて!いつものことだべ」

『さっすがスガ!わかってる!』

「ちわっす!!!」

『やっほー!田中!』

「・・・あつい」

『あ、ゴメンね!』


抱きつかれた本人に言われ、少女はやっと、体に絡めた腕を離した。
少女が1人加わっただけで、一気に騒がしくなった面々だったが、いつも通りの光景のようだ。


『入部届け2枚か〜、まあ放課後になったばっかりだし後から増えるよ!』


新一年生楽しみだねと嬉しそうに笑う少女に、先ほどまで呆れた顔をしていた烏野高校男子バレー部主将の澤村大地の表情も緩む。
澤村が持ったままの入部届けを許可なくペロリとめくるが、誰も咎める様子はなかった。
抱きつかれたメガネをかけた美女も、美女まではいかないものの余計な言動がなければ可愛いに属するであろう少女も、バレー部のマネージャーなのだから。

『日向くんに、影山くんか〜』

「え?影山?」

『ほら、2枚目に!』


入部届けをペラリとめくって見せれば、澤村は驚いたように入部届けに食いつく。


「コイツって、もしかして・・・!?」

『なになに?知り合い?』

「北川第一のセッターじゃないか?」

「「ああー!!!」」

『「??」』


澤村から出てきたワードに、同じ部活のメンバーである菅原と田中は納得したように声をあげる。
あまりピンとこなかった、女子2人はそろってコテンっと首をかしげるのだった。