夜蛾学長からの試練

僕はすみれを夜蛾学長の所へ連れて行くために彼女の手をひいて高専内を歩いていた。

「さとるー。どこ行くの?」

「学長のとこだよ」

「がくちょ…」

誰だっけなみたいな顔して僕を見るすみれについ笑ってしまう。そういえばすみれが前にいた時は違う人だったなぁ

「夜蛾センのことだよ、夜蛾セン」

「やがせんせ!」

「そ、だから夜蛾センのことは夜蛾学長って言ってね」

「ん、がくちょー!」

学長が自分の知っている人だと理解したすみれはふんふんと楽しそうに僕の腕を引っ張った。これから夜蛾学長に意地悪されるとも知らずに

「夜蛾学長もさ〜すみれに会わせろってうるさくてね。勝手に会いに来ればいいのに。別に僕だって意地悪してすみれを夜蛾学長に会わせなかったんじゃないんだよ?」

ちょっと納得いかなーいという声色で言うとすみれが僕を下から盗み見るように見上げてくる

「さとる、怒ってるの?」

「怒ってないよ。さ、着いた。僕はココまでだからすみれ行っておいで」

夜蛾学長がいる部屋の前に着きすみれに中に入るように促すもなかなかすみれは中に入ろうとしなかった

「…さとる」

「だいじょーぶ。僕はここですみれのこと待っててあげるから」

僕の脚にしがみつく小さな白い塊にどうしようかなぁと思っていると学長が待っている部屋の扉が勝手にスライドして開いた

「すみれ」

僕はそっとすみれを僕の脚から剥がすとその小さな背中を押して室内に押し込んだ

すみれが中に入るとドアが再び勝手に閉まる

その様子に僕は目隠しを少しズラしてすみれにエールを送った

…頑張っておいで

†‥すみれ‥side†

今日はゆーじものばらもめぐみも任務で朝早くからお出かけしてるみたいで3人のお部屋に行っても誰もいなかった

「むぅ…」

しょーこもすみれが入れないお部屋に入ってるみたいだったしすぐるも居なかった

1人で過ごすのは初めてじゃないけどやっぱり少しだけ寂しいなぁと思いながら校庭の芝生の上にコロンと寝転んだ

カァ

鳴き声が聞こえて目を開けると一匹の黒い鴉がすみれの顔を覗き込んでいた

「からすさん…からすさんも一人ぼっちなの?すみれも1人なの。一緒だね」

わたしが手を伸ばすとそのからすさんはわたしの手にアタマを擦り寄せてくれた

「かわいい…」

鴉の頭をよしよしと撫でているとすみれの目の前いっぱいにさとるの顔が広がった

「あ、いたいたすみれ。探したよ〜」

「さとる?任務は?」

朝、さとるもみんなと同じで見つからなかったから任務に行ってると思ったけど違ったのかな

「ん?そんなの僕にかかれば一瞬だよ。一瞬」

…僕、最強だから☆

…うん、知ってるよ

そう言ったらさとるはつまんなそうに唇を尖らせていたけど手をパンと1つ叩いた後にわたしの身体をおこした

「さ、すみれ。行くよ」

さとるに連れられてきたのは夜蛾せんせ…あ、違う。夜蛾がくちょーのいるお部屋だった。ついさっきまでは夜蛾がくちょーに会うのとっても楽しみだったけどお部屋の前に来たらなんか急にイヤだって思った

…怖い。入りたくないな

そう思ってさとるを見上げたけれど、さとるは困った表情ですみれのことを見ていた

「だいじょーぶ。僕はここですみれのこと待っててあげるから」

さとるが大丈夫って言ってくれたからすみれ頑張るよ。なんかよく分からないけど

お部屋の中に入ると真っ暗で身体がぶるぶると震える

「夜蛾がくちょー」

呼んでみたけど返事がない…どうしようって思った時だった

お部屋の奥が急に明るくなって夜蛾がくちょーがボッて出てきた

「?!?!!」

…さとる!さとる!さとる!

「すみれ」

夜蛾がくちょーに名前を呼ばれた

「はい」

「お前は何故ココに戻ってきた」

…なんで?それは…

「みんなに笑っててほしいから。さとるもすぐるも、しょーこも。ゆーじものばらもめぐみも。夜蛾がくちょーもだよ。みんな、みーんな!」

「過去を変えたかもしれないということに自覚は?」

「あるっ!なんで夜蛾がくちょーがその事知ってるのかは知らないけど!すみれはみんなと一緒にいたいの!みんなと居るためにココに戻ってきたの!寂しいひとりはイヤ!」

すみれおまえが戻ってきたことで悟や傑、他の人たちが傷ついても?」

「さとるたちは最強だもん!だからすみれは僕たちの近くで笑ってればいいってさとる言った!」

ひと任せか?」

「すみれは…すみれは…」

夜蛾がくちょーに言い返せなくてぎゅっと洋服を握りしめる

…頑張っておいで

さとるが頑張れって言ってくれたもん…だからっ

「すみれが!みんなが笑っていられる世界を作るの!すみれしかホントのことは知らないけど…でもすみれはみんなと一緒に居たい!」

顔を上げてキッと夜蛾がくちょーに顔を向けるとすみれの足元に緑のぬいぐるみがやってきた

-合格!意地悪してゴメンね!-

「ふぇ?」

「合格だ、すみれ」

†‥すみれside‥†


すみれが部屋に入ってから僕はずっと部屋の前ですみれと夜蛾学長が出てくるのを待っていた

「学長のことだから、すみれにもキッツいこと言ってるのかなぁ…泣いてなきゃいいけど」

…すみれがみんなが笑っていられる世界を作るの!すみれはみんなと一緒に居たい!

「おっ」

すみれの精一杯の宣言が聞こえて夜蛾学長の試験が終わったことを悟った

ドアがゆっくりと開いて中からすみれが出てくる

真っ赤な目をさらに赤く染めてポテポテと僕に近づいてくるすみれを迎え入れるように僕は手を広げておいでと声をかけた

「頑張ったね」

「さとるっ…すみれ、すみれね…」

「うん、だいじょーぶ。すみれ、エライね。脳筋学長に負けなかったね」

「おい、悟」

「おっと、いらっしゃったんですか?学長」

部屋から出てきた学長は僕の腕の中で縮こまっているすみれの頭を優しく撫でる

「すまなかったな、すみれ。キミは呪術師ではないが少し試させた貰った。私を嫌うか?」

ふるふると頭を振るすみれにホッと息を吐いた夜蛾学長

…嫌われるのがイヤならこんな事しなきゃいいのに

「すみれ、キミの決意のご褒美に呪骸コレを上げよう。わたしがモトを作ったがすみれ、キミが完成させるんだ」

学長のその声にすみれが顔を上げた

「…うさちゃん」

学長の手には学長のうさぎ型の呪骸

随分とファンキーなものを作ったなぁと思っていたらすみれは気に入ったみたいで学長から受け取ってすでにぎゅっと抱きしめていた

夜蛾学長からの試練
「良かったね、すみれ。大事にするんだよ」
「うん。マサルよろしくね」
「マサル?!どうしてそうなったの?!」
「…うさまる」
「すみれ、もっと違う名前にしよ?ね!」
「じゃあ…」

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